タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。


「……え?」

「私、今のままでも、しあわせだし」

「…………」

「秘密にするのも、それはそれで楽しいしさ」


 そう言って、向けられたのは――綺麗な微笑みだった。


「…………」

 胸の奥が、ざわつく。

(怒った?)

(藤沢のほうが、秘密のままにしたくなった?)

 一瞬、そう思ったけれど。

「じゃあ、もうすぐ劇始まるね。がんばって」

「あ……うん」

 ネクタイからするり、と手を離した彼女は、そのまま行ってしまった。

 その背中を、目で追った。

(…………)