タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。


 八月も、後半に差しかかった。

 文化祭は、夏休み明けすぐにある。
 劇の練習、大道具や小道具、セットの準備も、なんとか順調に進んでいる。

 冷房の効いた教室。
 あずさと一緒に、男の子たちが劇で使うネクタイを縫っている。

「綺麗に縫えたーっ」

 出来上がったひとつを、眺めた。

「これ、慎の分にしちゃおっと」

 こっそり呟くと、あずさに「ご機嫌じゃん」と笑われた。

「うん。この前ね……慎からキスしてくれたんだっ」

 あれはたぶん、元彼(にいやま)への嫉妬だった。

 モヤモヤさせたくはないけれど、まったく気にされなかったら、それはそれで悲しい。
 だから、少しだけ安堵してしまった。

「なんだ。結局、仲良しなんじゃん」

「え?」

「お盆の前あたり、ひな子、暗かったから。喧嘩でもしたのかと思った」

 あずさは、気づいてくれていたのだ。

「……ちょっとだけね」

(慎のせいだけじゃ、ないけど)

 両親のことは、あずさにも詳しくは話せていない。
 彼女とはすごく仲がいいけれど、だからといってどこまで話していいか、わからない。