タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。

 ◇

 お盆休みが明けて、学校で文化祭の準備が再開した。

 今日は、パネルの色塗りを進める。
 適当に座ったら――藤沢の隣になった。

 数日ぶりに会う彼女を意識しまくりながらも、気を引き締めて筆を持つ。

「南くん。この色とこの色、どっちがいいと思う?」

 そんな俺をよそに、彼女はにこにこと話しかけてくる。

 机の下で――ぴたりと足をくっつけながら。

「……こっちじゃない」

 なんとか冷静を装い、答えると。

「南、おとなしいっしょ?」

 向かいに座る、バスケ部の男子・近藤(こんどう)が、藤沢に絡み始めた。

「女子とあんまり喋んないけど。こわいやつじゃないからね?」

 彼女が、ちらり、と俺を見てくる。


「うん。南くん、やさしいよね」


 柔らかい声でそう言われ、頬が熱を持つ。

「ああ。二人って、去年も同じクラスだっけ?」

「うん。教科書見せてもらったり」

「え。そんなん、俺も見せるよ?」

「ハハハ」

 軽く笑って、あしらっている。
 動揺する様子は、まったくない。

 きっと、こういうことを言われるのには、慣れているのだろう。

 筆を持つ手に、無駄な力が入った。