タイプじゃないと言われたので、好きな子ができるまで恋人にしてもらいました。

 ◇

 帰宅前に、祖母の家へ寄った。

「これで足りる?」

 タッパーに、たくさんおかずを詰めてくれる。

「うんっ! 美味しそー。ありがとう、おばあちゃん」

 明るく、笑ってみせた。

「ここで食べていっちゃえばいいのに」

「このあと、ちょっと予定があってさ」

 心配そうな眼差しを、向けられる。

「早苗(さなえ)さんは、詳しくは言ってなかったけど……また克司(かつし)が、何かしちゃったのかしら」

 祖母は、息子である父が原因なのではと心配している。

「……昨日の夜、喧嘩してたね」

 祖母は「あら、やだ」と息を吐いた。

「ひなちゃんにも、辛い思いさせて……ごめんね」

 申し訳なさそうに、肩をすくめている。


 両親の喧嘩は、私が中学に上がった頃から、目に見えて増えた。

 あとになって、母から『お父さん、フリンしてたの』と明かされた。
 離婚はしないと聞いて、ほっとしたのと同時に、ショックだった。

 夫婦というかたちは、一応は保たれている。
 でも、私にはもう、そうは見えない。

 父とうまくいかなくなってから、母は私への干渉が強くなった。
 私はそれに抗うことも、受け止めることもできず、少しずつ距離を置くようになった。
 後ろめたさを感じてしまう一方で、離婚しないなら、父のことは言わないでほしかったとも思ってしまう。