71歳の恋愛小説家

商業ビルの方は建築も進んで、今年の十月末には完成するようだ。後、五ケ月ほどだ。

祐子は、不動産屋に紹介されたコーヒーに定評のあるカフェでアルバイトとして半年だけと言う条件で雇ってもらった。

勉強の為とバリスタのレベル一の資格を取るためにバリスタとして働いている事が必要だったのだ。

バイト代はいらないと言ったそうだが、そう言う訳にはいかないと言って律儀にバイト代も下さるそうだ。

祐子はお料理が好きだったので結婚前に料理を習っていた時に調理師免許を取っていた。

“何でも資格は取っておくものだわ、いつ役に立つかわからないわね”と言って笑っていた。

食品衛生責任者の資格も必要らしく、それもカフェのオーナーに言われて取りに行っていた。

カフェの方を急いで内装を仕上げてもらうようにしている。

もう一つの方もカジュアルフレンチのお店が入ってくれることになった。

下の二件が決まったので、二つの雰囲気を合わせて一階の外観がおしゃれなものになっていった。

何より、裕子がやる気に満ちていて精力的に動き出したのでそれが加奈子には一番うれしかった。

加奈子の方は四苦八苦して何とか脚本と言う物を仕上げてみたが、結構楽しかったので忙しいことには何の不満もなかった。

最初は何もわからず、いろんな制約や決まり事もあって、脚本の書き方という本や出版社の担当者に教えを請いながら手探りで進めて行ったのだ。

柱と言われる”場所“例えば新幹線の下りホーム、そしてト書きと言われる状況の説明、つまりホームの喧騒の様子などどんな人が近くにいるのかとかを細かく丁寧に書いていった。

そしてセリフで、主人公や周りの人たちの性格や関係性を表していく。

ほとんどがセリフなのだが、話し言葉で書くセリフは、加奈子には結構書きやすく人物を自分の好きに動かせて楽しかった。

でも、会話の部分ももっと膨らませて書く必要があったので、主人公や周りの主な人物像を再度しっかりとしたプロットを描いた。

その人の性格や好きな食べ物に好きな色、服装の傾向、右利きか左利きか等細かく設定していった。

出版社の担当者は、その人物像のプロットも制作側は欲しがるだろうといったので、それも一話の脚本につけて渡した。

セリフの間にも、その人物の表情や心情などもト書きで書き入れていく。

頭に映像として文章を書く加奈子には脚本の方が書きやすかった。

二カ月貰った期間で結構書き進めてしまっていた。

それを出版社の担当に送って、ドラマのプロデユーサーとのWEB会議になった。

概ね脚本はOKが出されたので安堵した加奈子だった。

それからは、ドラマになる小説のどこを使いたいとか、ここはもっと広げて書いてほしいとか、これはカットするとかの指示が入った。

また、場面ごとに詳細のト書きを要求された

例えば花瓶に入っている花の種類や花瓶の詳細、コーヒーを飲むシーンでは、そのカフェの様子や椅子テーブルにカップの色、コーヒーの種類など事細かに書いてほしいと言われた。