71歳の恋愛小説家

加奈子は夕食後、裕子に涼介に電話するように言った。

電話はスピーカーにしてみんなが聞いていた。

涼介は家に誰も居ない事で不機嫌になっていた。

健司が録音機能を作動させて会話を録音していた。

涼介はすぐに電話に出た。

もう家にいるようだ。

「裕子、どういうつもりだ。また殴られたいのか。夕飯の支度もしないで子供達はどうしたんだ」

そこで加奈子は裕子に合図して話始めた。

「加奈子です」

母がそう言うと涼介は、はっとしたように息をのんだ。

「裕子から話は聞きました。痣になってる体も、今朝殴られた顔も見ました。医者に行かせたら肋骨にひびが入っていると言われたそうです。診断書も全部貰ってあります。先ほど弁護士の先生にお願いしたのでこれからの交渉は弁護士の先生として下さい。先生から連絡があるはずです。もし逃げ回ったり子供達の学校に押しかけたりしたら、警察に訴えることになりますよ。弁護士の先生に少し話をしたら、傷害罪で訴える事ができるでしょうと言ってました。会社の方に弁護士が押しかけたり警察がいったりするのは困るでしょう。だから行動は慎んでください。明日、あなたの実家に連絡させて頂きます。離婚一択しか考えていません。裕子や子供達には、二度とあなたに会わせるつもりも話をさせるつもりもありません。速やかにその家を出て下さい。その家の名義は土地と家の二分の一が裕子の名義になっています。あなたに居座る権利はないですよ。いいですね、このくそったれ野郎」

毅然としてそう言うと電話を切った。健司は

「ばあば、かっけい」 

と言って、録音したものを明日弁護士の先生に渡せるようにUSBに入れてくれた。

最後の”くそったれ野郎”だけは消してもらった。