71歳の恋愛小説家

加奈子は高校を出たら働くつもりだったのでそんなに悲壮感なくその推薦は辞退することができた。

担任の先生は父に話してやると言ってくれたが、大学の四年間を選ぶより働いてきちんと収入を得るほうを加奈子は選んだのだ。

つまり金儲けの方を…お金が無いと言う事の辛さを中学生の時に体験していたから学ぶより働く方を選んだ。

その推薦は、同じクラスの男の子が受けて外大に進学が決まった。

羨ましくはなかったが、少し落ち込んだことも事実だ。

加奈子は大きな商事会社に就職できた。

英語の検定二級と高校の成績がものをいったらしい。

外資系の商事会社なので給料はよかった。

父は高校の卒業式の日に、前から付き合っていた人と再婚すると言った。

ここでは一緒に暮らせないのでお前はどうすると言われて、迷わず会社の寮に申し込んだ。

きっと父は加奈子が独立する日を待っていたのだろう、せめてもの父の親心だと思う事にした。

それで父親とは縁が切れたようだった。

それから一度も連絡はなかった。

再婚すると言う女性に会ったのは父の葬式の時だった。

祖母は高校の卒業式が済んだ後、一週間後に亡くなった。

加奈子の就職を見届けて安心したのだろう。

一カ月くらい入院していたのだが、胃がんで医者の予想よりも早かったらしい。

加奈子は始めて死による別れの喪失感に襲われた。