暫くして風が止みはじめると、だんだんと腕の力が緩められていく中、私はあの日を思い出す。
──そう、ギル様を好きだと気づいて告白したあの日、私はこの『男装』とおさらばしたはずだった。
だけれど私は今、茶色のショートカットのカツラに執事服を身に纏い、もう一度『男装執事リオ』になっている。
前回はギル様から逃げるために男装執事になっていたのに、今回は一緒にいたくて男装執事になっているだなんて……ふふふっ。
本当に、不思議!
男装する理由があの頃と今で、こんなにも違うんだから。
久しぶりなこともあって、ついついカツラの存在を忘れそうになってしまう。
そんな私の頭に、ギル様の綺麗な指先が優しく触れた。
「……ギル様?」
「少し待て」
ギル様の指先に視線を移すと、風で乱れてしまったカツラを丁寧に整えてくれていた。
何度か優しく触れると、綺麗になった私の頭を見て「よし」と満足気に笑う。
そして、最後に愛おしむように私の頭を一撫でして、温かい手が離れていった。



