あの日、青い海に君を置いてきた

「大変です!」
全員が振り向く。
「隣山中の生徒が雷に打たれて……意識不明だそうです」

ナオの背中を、ぞくっと冷たいものが走った。
隣山中。

さっき、
『普通に練習してますよ』
と電話の向こうで言っていた学校だ。

遠くから、救急車のサイレンが聞こえた。

一台。

また一台。

校長先生が勢いよく立ち上がった。
「あ……ああ、屋内待機!」

さっきまでとは別人のような声だった。
「下校させるな! 運動部は屋内へ! 外にいる生徒はすぐ中へ入れろ! 今後は一人も外へ出すな! 急げ!」

教師たちが一斉に動き始める。
「野球部、呼び戻します!」
「テニス部も!」
「昇降口、閉めます!」

廊下からも大声が聞こえてきた。
「おーい! グラウンドにいるやつ、すぐ中に入れ!」
「雷事故が起きた! 全員、校舎へ戻れ!」

職員室が一気に慌ただしくなる。
その真ん中で。

アンナ先生だけが、静かに立っていた。
勝ち誇るでもない。
「だから言ったでしょう」と言うでもない。

ただ、モニターに映る雷の情報をじっと見つめている。
ナオは扉の陰から顔を半分だけ出し、その横顔を見つめた。

――アンナ先生、すごい。

みんなに嫌な顔をされても。
顧問の先生に文句を言われても。
校長先生に「ありがた迷惑」なんて言われても。
ずっと、
「だめ」
と言い続けた。

もし、アンナ先生が何も言わなかったら。
東西中のサッカー部も、今ごろグラウンドにいた。
そう思った瞬間、ナオはなんだか自分のことのように誇らしくなった。

――やっぱり、アンナ先生って、かっこいい。
そのとき、