土曜日の朝。
凪沙は、家の前の海を眺めながら、樹を待っていた。
今日は、樹が初めて佐賀関へ来る日だった。
「まだかな……」
スマートフォンを見る。
すると、遠くから一台の車が近づいてきた。
車が止まる。
助手席から樹が降りてきた。
そして運転席から、女性が降りてくる。
「ありがとう、お母さん」
「いいのよ。初めて来る場所なんだから、近くまで送ってあげる」
樹のお母さんだった。
凪沙は少し緊張しながら、二人のところへ歩いていく。
「おはようございます」
「あら」
樹のお母さんは凪沙を見る。
そして、少し目を丸くした。
「もしかして……凪沙ちゃん?」
「はい。神志那凪沙です」
その瞬間、お母さんの顔がぱっと明るくなる。
「やっぱり!」
樹が慌てる。
「お母さん……」
「だって、ずっと聞いてたもの」
「何を?」
凪沙が不思議そうに聞く。
お母さんは樹を見る。
「この子が小学生の頃から大事にしてるシーグラスをくれた女の子」
「……」
樹の顔が赤くなる。
「お母さん、もういいって」
凪沙は少し驚いた。
「そんなに話してたんですか?」
「話してたわよ」
お母さんは楽しそうに笑う。
「それにね、この子、あの日からずっと――」
「お母さん!」
樹が遮る。
「はいはい」
お母さんは笑いながら凪沙を見る。
「ごめんね。つい嬉しくなっちゃって」
「いえ……」
凪沙も少し照れながら笑った。
お母さんは樹を見る。
「じゃあ、今日は楽しんでおいで」
「うん」
「凪沙ちゃん、樹のことよろしくね」
「はい!」
車が走り去っていく。
凪沙と樹は、二人きりになった。
「……ごめん」
「なんで?」
「母さん、すぐ茶化すから」
凪沙は笑った。
「優しいお母さんだね」
「うん」
樹も笑った。
「じゃあ、海行こう」
「うん」
二人は砂浜へ向かった。
*
海を見た樹は、しばらく言葉を失った。
「……これが、凪沙の海なんだ」
「うん」
凪沙は笑った。
二人で砂浜を歩く。
シーグラスを探す。
小学生の頃の話をする。
そして、昼が近づいた頃。
凪沙がふと思った。
「ねえ、樹」
「ん?」
「お母さん、もう帰っちゃったよね?」
「うん」
「だったらさ」
凪沙は少し考えてから言った。
「お昼、一緒に関アジ食べていきませんか?」
樹が驚く。
「いいの?」
「うん。おじいちゃんに言ってみる」
「でも……」
「せっかく佐賀関まで来たんだから、関アジ食べて帰ってよ」
樹は少し笑った。
「じゃあ……お願いします」
凪沙も笑う。
「決まりね」
その日、樹は初めて佐賀関の海を見るだけではなかった。
海のそばで暮らす凪沙の家に入り、彼女の家族と一緒に昼食を食べることになる。
そして、そこで樹は初めて知る。
凪沙がどんな家で育ち、どんなふうに海と一緒に生きてきたのかを。
凪沙は、家の前の海を眺めながら、樹を待っていた。
今日は、樹が初めて佐賀関へ来る日だった。
「まだかな……」
スマートフォンを見る。
すると、遠くから一台の車が近づいてきた。
車が止まる。
助手席から樹が降りてきた。
そして運転席から、女性が降りてくる。
「ありがとう、お母さん」
「いいのよ。初めて来る場所なんだから、近くまで送ってあげる」
樹のお母さんだった。
凪沙は少し緊張しながら、二人のところへ歩いていく。
「おはようございます」
「あら」
樹のお母さんは凪沙を見る。
そして、少し目を丸くした。
「もしかして……凪沙ちゃん?」
「はい。神志那凪沙です」
その瞬間、お母さんの顔がぱっと明るくなる。
「やっぱり!」
樹が慌てる。
「お母さん……」
「だって、ずっと聞いてたもの」
「何を?」
凪沙が不思議そうに聞く。
お母さんは樹を見る。
「この子が小学生の頃から大事にしてるシーグラスをくれた女の子」
「……」
樹の顔が赤くなる。
「お母さん、もういいって」
凪沙は少し驚いた。
「そんなに話してたんですか?」
「話してたわよ」
お母さんは楽しそうに笑う。
「それにね、この子、あの日からずっと――」
「お母さん!」
樹が遮る。
「はいはい」
お母さんは笑いながら凪沙を見る。
「ごめんね。つい嬉しくなっちゃって」
「いえ……」
凪沙も少し照れながら笑った。
お母さんは樹を見る。
「じゃあ、今日は楽しんでおいで」
「うん」
「凪沙ちゃん、樹のことよろしくね」
「はい!」
車が走り去っていく。
凪沙と樹は、二人きりになった。
「……ごめん」
「なんで?」
「母さん、すぐ茶化すから」
凪沙は笑った。
「優しいお母さんだね」
「うん」
樹も笑った。
「じゃあ、海行こう」
「うん」
二人は砂浜へ向かった。
*
海を見た樹は、しばらく言葉を失った。
「……これが、凪沙の海なんだ」
「うん」
凪沙は笑った。
二人で砂浜を歩く。
シーグラスを探す。
小学生の頃の話をする。
そして、昼が近づいた頃。
凪沙がふと思った。
「ねえ、樹」
「ん?」
「お母さん、もう帰っちゃったよね?」
「うん」
「だったらさ」
凪沙は少し考えてから言った。
「お昼、一緒に関アジ食べていきませんか?」
樹が驚く。
「いいの?」
「うん。おじいちゃんに言ってみる」
「でも……」
「せっかく佐賀関まで来たんだから、関アジ食べて帰ってよ」
樹は少し笑った。
「じゃあ……お願いします」
凪沙も笑う。
「決まりね」
その日、樹は初めて佐賀関の海を見るだけではなかった。
海のそばで暮らす凪沙の家に入り、彼女の家族と一緒に昼食を食べることになる。
そして、そこで樹は初めて知る。
凪沙がどんな家で育ち、どんなふうに海と一緒に生きてきたのかを。

