海から届いたお守り

高校を卒業してから、時間はあっという間に過ぎていった。

樹は大学に無事合格し、四年間、パソコンやプログラム、鉄の分野について一生懸命学んだ。

大学生活では、課題や試験に追われることもあった。

思うようにいかないこともあったけれど、将来は日鉄で働きたいという目標を忘れず、四年間しっかり勉強した。

そして大学を卒業。

念願だった日鉄に入社し、正社員として働き始めた。

仕事ではパソコンを使った業務やプログラムに関わることもあり、大学で学んだことが少しずつ仕事に役立っていた。

ある日の仕事帰り。

樹は歩きながら、高校生の頃のことを思い出していた。

――日鉄で正社員として働きたい。

――いつか凪沙を支えられるようになりたい。

あの頃、竜樹さんに相談したこと。

「大学に行って、パソコンのことも勉強して、鉄の分野も学んでから来てもいい」

そう言ってくれたこと。

今、その言葉を胸に、樹は日鉄の社員として働いている。

一方、凪沙も高校卒業後、希望していた佐賀関の介護施設で働き始めた。

最初は分からないことばかりだった。

利用者さんとの接し方、介助の仕方、仕事の流れ。

先輩職員に教えてもらいながら、一つずつ覚えていった。

大変なこともあった。

それでも、利用者さんから、

「ありがとう」

と言ってもらえるたびに、凪沙はこの仕事を選んでよかったと思った。

そして四年間、介護の仕事を続けた。

勉強も頑張り、介護福祉士の試験にも合格。

介護福祉士になってから、さらに一年が経った。

今では、利用者さんから名前を呼んでもらえることも増えていた。

「凪沙ちゃん、今日も来たんかえ」

「はい。今日もよろしくお願いします」

笑顔で返事をする凪沙。

高校生の頃に思い描いていた、

「佐賀関で介護の仕事がしたい」

という夢を、凪沙も叶えていた。

ある日の仕事終わり。

凪沙が帰ってくると、樹も仕事から帰ってきていた。

「おかえり」

「ただいま」

二人は顔を合わせて笑った。

高校生の頃とは、少し違う。

樹は日鉄の正社員。

凪沙は介護福祉士。

二人とも、それぞれ社会人として自分の仕事を持っている。

「今日どうやった?」

樹が聞く。

「忙しかったけど、なんとか終わったよ。樹は?」

「俺も忙しかった」

「そっか」

二人で笑う。

ふと、樹は凪沙を見る。

高校生の頃からずっと変わらない気持ちがあった。

凪沙のことが好き。

そして、大切にしたい。

樹は、あの日のことを思い出していた。

竜樹さんに、

「凪沙を、俺に貰ってもいいですか」

と聞いた日のこと。

あのとき竜樹さんは、

「まずは自分のことをしっかりせえよ」

と言ってくれた。

今の樹には、仕事がある。

大学を卒業し、日鉄で正社員として働いている。

凪沙も、自分で選んだ道を歩いている。

まだまだこれからの人生だけれど、高校生の頃に描いた未来へ、二人は一歩ずつ近づいていた。

樹は心の中で思う。

――そろそろ、あの日の続きを話してもいいかもしれない。

そして凪沙もまた、樹と過ごしてきた長い時間を思い返していた。

二人の未来は、これからさらに動き始めようとしていた。