高校二年生になって、二人は少しずつ自分たちの将来について考えるようになっていた。
その日の夕方も、樹と凪沙は、おじいちゃんの家の居間で進路のプリントを広げていた。
先に口を開いたのは樹だった。
「……なあ、竜樹さん」
台所にいた竜樹が振り返る。
「ん? どうした?」
「俺、竜樹さんみたいな仕事したいんよ」
「俺みたいな?」
「うん。日鉄で、プログラムとかパソコン使ってする仕事」
樹は少し迷いながら話した。
「でも、高校から日鉄に入る求人って、桜ヶ丘では取ってないんでしょ?」
竜樹は少し考えてから答えた。
「そうやな。高校からの求人だけにこだわらんでもいいんじゃないか?」
「え?」
「大学に行って、パソコンのことも勉強して、鉄の分野も学んでから来てもいい」
樹は真剣に聞いていた。
「大学でしっかり勉強してから入ったほうが、できる仕事の幅も広がるしな」
「そうなん?」
「ああ。それに、大学卒業のほうが給料もいいけんなぁ」
「……そっか」
樹は進路のプリントを見つめた。
高校を卒業して就職するのか。
それとも大学へ進学してから、日鉄で働くのか。
今までぼんやりしていた将来が、少しずつ見えてきた。
「俺……大学、行ってみようかな」
「そう思うなら、ちゃんと調べてみたらいい」
「うん」
竜樹は樹の肩を軽く叩いた。
「焦らんでいい。まだ二年生やけん」
「でも、今から考えといたほうがいいよな」
「そうやな。やりたい仕事が見えちょるなら、それに向かって何を勉強したらいいか考えてみればいい」
「ありがとう、お父さん」
「おう」
凪沙は二人の会話を聞きながら、自分の進路のプリントを眺めていた。
樹がやりたいことを見つけようとしている。
それを見ていると、自分もちゃんと考えなければと思った。
「樹」
「ん?」
「私もね……」
凪沙は少し迷ってから話し始めた。
「介護の仕事、したいって思っちょる」
「介護?」
「うん。佐賀関の施設で働きたいなって」
樹は凪沙の顔を見る。
「どうして介護なん?」
「お母さんが介護士として働いちょったから」
凪沙の母親、雪は介護士として働いていた。
凪沙は小さい頃から、母親が人のために働いている姿を見てきた。
大変な仕事だということも分かっている。
それでも、自分も人の役に立つ仕事がしたいと思っていた。
「お母さんみたいになりたいん?」
樹が聞く。
凪沙は少し考えてから答えた。
「うん……それもあると思う」
「でも、それだけじゃなくて」
「うん」
「私も、お年寄りの人と話したり、困っちょる人のお手伝いしたりする仕事がしたいんよ」
凪沙は窓の外を見る。
庭の向こうには、いつもの海が広がっている。
「佐賀関で働けたらいいなって思っちょる」
樹が笑った。
「凪沙に合いそう」
「ほんと?」
「うん。凪沙、人のことよく見ちょるし」
「そうかな」
「そうやで」
凪沙は少し照れながら笑った。
「じゃあ、樹は大学に行って、私は介護の勉強して……」
「それぞれ頑張るんやな」
「うん」
まだ二人の進路が決まったわけではない。
樹には、大学へ進学してパソコンや鉄について学ぶ道。
凪沙には、介護について学び、佐賀関の施設で働く道。
二人はそれぞれ違う未来を思い描き始めていた。
けれど――。
「どっちも、まだこれからやな」
樹が言う。
「うん」
凪沙も頷く。
「一緒に調べていこうか」
「そうやな」
二人は並んで進路のプリントを覗き込んだ。
まだ何者でもない二人だったけれど、少しずつ、自分が歩いていきたい道を見つけ始めていた。
その日の夕方も、樹と凪沙は、おじいちゃんの家の居間で進路のプリントを広げていた。
先に口を開いたのは樹だった。
「……なあ、竜樹さん」
台所にいた竜樹が振り返る。
「ん? どうした?」
「俺、竜樹さんみたいな仕事したいんよ」
「俺みたいな?」
「うん。日鉄で、プログラムとかパソコン使ってする仕事」
樹は少し迷いながら話した。
「でも、高校から日鉄に入る求人って、桜ヶ丘では取ってないんでしょ?」
竜樹は少し考えてから答えた。
「そうやな。高校からの求人だけにこだわらんでもいいんじゃないか?」
「え?」
「大学に行って、パソコンのことも勉強して、鉄の分野も学んでから来てもいい」
樹は真剣に聞いていた。
「大学でしっかり勉強してから入ったほうが、できる仕事の幅も広がるしな」
「そうなん?」
「ああ。それに、大学卒業のほうが給料もいいけんなぁ」
「……そっか」
樹は進路のプリントを見つめた。
高校を卒業して就職するのか。
それとも大学へ進学してから、日鉄で働くのか。
今までぼんやりしていた将来が、少しずつ見えてきた。
「俺……大学、行ってみようかな」
「そう思うなら、ちゃんと調べてみたらいい」
「うん」
竜樹は樹の肩を軽く叩いた。
「焦らんでいい。まだ二年生やけん」
「でも、今から考えといたほうがいいよな」
「そうやな。やりたい仕事が見えちょるなら、それに向かって何を勉強したらいいか考えてみればいい」
「ありがとう、お父さん」
「おう」
凪沙は二人の会話を聞きながら、自分の進路のプリントを眺めていた。
樹がやりたいことを見つけようとしている。
それを見ていると、自分もちゃんと考えなければと思った。
「樹」
「ん?」
「私もね……」
凪沙は少し迷ってから話し始めた。
「介護の仕事、したいって思っちょる」
「介護?」
「うん。佐賀関の施設で働きたいなって」
樹は凪沙の顔を見る。
「どうして介護なん?」
「お母さんが介護士として働いちょったから」
凪沙の母親、雪は介護士として働いていた。
凪沙は小さい頃から、母親が人のために働いている姿を見てきた。
大変な仕事だということも分かっている。
それでも、自分も人の役に立つ仕事がしたいと思っていた。
「お母さんみたいになりたいん?」
樹が聞く。
凪沙は少し考えてから答えた。
「うん……それもあると思う」
「でも、それだけじゃなくて」
「うん」
「私も、お年寄りの人と話したり、困っちょる人のお手伝いしたりする仕事がしたいんよ」
凪沙は窓の外を見る。
庭の向こうには、いつもの海が広がっている。
「佐賀関で働けたらいいなって思っちょる」
樹が笑った。
「凪沙に合いそう」
「ほんと?」
「うん。凪沙、人のことよく見ちょるし」
「そうかな」
「そうやで」
凪沙は少し照れながら笑った。
「じゃあ、樹は大学に行って、私は介護の勉強して……」
「それぞれ頑張るんやな」
「うん」
まだ二人の進路が決まったわけではない。
樹には、大学へ進学してパソコンや鉄について学ぶ道。
凪沙には、介護について学び、佐賀関の施設で働く道。
二人はそれぞれ違う未来を思い描き始めていた。
けれど――。
「どっちも、まだこれからやな」
樹が言う。
「うん」
凪沙も頷く。
「一緒に調べていこうか」
「そうやな」
二人は並んで進路のプリントを覗き込んだ。
まだ何者でもない二人だったけれど、少しずつ、自分が歩いていきたい道を見つけ始めていた。

