海から届いたお守り

翌朝。

昨日の痛みが嘘みたいに、凪沙の体調は落ち着いていた。

目を覚ますと、お腹の痛みもほとんどなくなっている。

「……よかった」

凪沙はゆっくり起き上がった。

しばらくして、隣の離れから樹がやってきた。

昨日のことが心配で、朝早くからおじいちゃんの家へ来ていたのだ。

「凪沙、大丈夫?」

居間に入ってきた樹は、凪沙の顔を見るなり聞いた。

「うん。今日はもう大丈夫だよ」

「ほんと?」

「うん」

凪沙が笑う。

けれど樹は、まだ心配そうに凪沙の顔を見ている。

「顔色は……昨日よりいいな」

「もう大丈夫やけん」

「でも、まだ無理せんほうがいいよ」

「分かったって」

「冷たいもの飲まんほうがいいんじゃない?」

「え?」

「温かいもの食べたほうがいいんじゃない?」

凪沙がぽかんとする。

「樹……」

「何?」

「ちょっと過保護じゃない?」

「だって昨日、倒れたやん」

「それはそうやけど……」

そこへ、おじいちゃんが居間に入ってきた。

「朝から何の話しよるんか?」

凪沙が笑いながら言う。

「樹がね、私のこと心配しすぎなんよ」

「そうなんか?」

「温かいもの食べたほうがいいとか、冷たいもの飲まんほうがいいとか……」

おじいちゃんは樹を見る。

「そりゃ心配するわな」

「じいちゃんまで……」

「昨日あんなに痛がっちょったんやけん」

そこへ竜樹もやってきた。

「何や、朝から賑やかやな」

「樹が凪沙のこと過保護になっちょるんよ」

竜樹が樹を見る。

「そうか」

「まあ、心配なんやろ」

樹は少し照れながら言った。

「だって……昨日、ほんとにきつそうやったけん」

凪沙は樹を見て、ふっと笑った。

「ごめんね、樹」

「何が?」

「心配かけたね」

樹はすぐに首を横に振る。

「謝らんでいいよ」

「でも……」

「凪沙が痛いときは、心配するに決まっちょるやん」

凪沙は少し照れながら笑った。

「ありがとう」

「うん」

おじいちゃんが竜樹に小声で言う。

「樹のほうが、俺らより過保護やないか?」

竜樹も笑った。

「そうやな」

「そのうち、凪沙がくしゃみしただけで心配しそうやな」

「やめてよ、じいちゃん!」

凪沙が笑い出す。

樹も恥ずかしそうに笑った。

昨日はあんなに心配したけれど、今日は凪沙の笑顔が見られる。

それだけで、樹はほっとしていた。

隣の離れに帰る前に、樹はもう一度凪沙に声をかけた。

「今日は無理せんでね」

「はいはい」

「ほんとに?」

「ほんと」

「じゃあ、またあとで来る」

「うん」

樹は安心したように笑って、離れの家へ戻っていった。

凪沙はその背中を見送りながら、少し笑った。

「ほんと、心配性やなぁ」

おじいちゃんと竜樹も、そんな二人を見ながら笑っていた。