昼ご飯が終わり、そろそろ帰る時間になった。
樹のお母さんが、ふと思い出したようにバッグを開ける。
「凪沙ちゃん」
「はい?」
「これ、渡したかったの」
小さな包みを取り出す。
「私ね、野津原で革のキーホルダーを作っていて」
そう言いながら、包みを凪沙に渡した。
「いつもは犬とか、いろんなキャラクターを作ってるんだけどね」
凪沙が包みを開く。
中から出てきたのは、小さな貝殻の形をした革のキーホルダーだった。
「……かわいい」
凪沙の目が輝く。
「貝殻……?」
「うん」
お母さんが嬉しそうに笑う。
「凪沙ちゃんに似合うものを作りたくて。お願いして、貝殻の形にしてもらったの」
凪沙はキーホルダーをそっと手のひらに乗せた。
「ありがとうございます。大事にします」
「よかった」
お母さんはほっとしたように笑った。
そして、凪沙のおじいちゃんに向き直る。
「今日は本当にありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ」
「これからも、樹のことをよろしくお願いします」
少し頭を下げる。
「凪沙ちゃんとも、これからも仲良くさせてあげてください」
おじいちゃんは笑った。
「もちろんじゃ」
そして樹を見る。
「こんないい子がおるんじゃ。仲良うせんほうがおかしいわ」
「おじいちゃん……」
樹が少し恥ずかしそうにする。
凪沙も笑った。
*
そういえば――
その夏、樹の家から凪沙の家には、お中元が届いていた。
樹の家は野津原で米作りをしてて、袋いっぱい届いた。
凪沙の家でも、
「せっかくじゃけん、こっちからも佐賀関のもんを返そう」
と、海のものを選んで送っていた。
山から届いたお米。
海から届いた恵み。
暮らしている場所は違う。
野津原と佐賀関。
山と海。
けれど、少しずつ互いの家に、相手の土地のものが届くようになっていた。
凪沙はもらった貝殻のキーホルダーを握りしめる。
「これ、バッグにつけてもいいかな」
「もちろん」
「ありがとう」
凪沙が笑う。
樹はその横で、少し照れながらそのキーホルダーを見ていた。
自分が大切にしている海の記憶が、今度は革の貝殻になって、凪沙の手の中に残った。
そして二人の間には、海と山をつなぐ小さな贈り物が、またひとつ増えた。
樹のお母さんが、ふと思い出したようにバッグを開ける。
「凪沙ちゃん」
「はい?」
「これ、渡したかったの」
小さな包みを取り出す。
「私ね、野津原で革のキーホルダーを作っていて」
そう言いながら、包みを凪沙に渡した。
「いつもは犬とか、いろんなキャラクターを作ってるんだけどね」
凪沙が包みを開く。
中から出てきたのは、小さな貝殻の形をした革のキーホルダーだった。
「……かわいい」
凪沙の目が輝く。
「貝殻……?」
「うん」
お母さんが嬉しそうに笑う。
「凪沙ちゃんに似合うものを作りたくて。お願いして、貝殻の形にしてもらったの」
凪沙はキーホルダーをそっと手のひらに乗せた。
「ありがとうございます。大事にします」
「よかった」
お母さんはほっとしたように笑った。
そして、凪沙のおじいちゃんに向き直る。
「今日は本当にありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ」
「これからも、樹のことをよろしくお願いします」
少し頭を下げる。
「凪沙ちゃんとも、これからも仲良くさせてあげてください」
おじいちゃんは笑った。
「もちろんじゃ」
そして樹を見る。
「こんないい子がおるんじゃ。仲良うせんほうがおかしいわ」
「おじいちゃん……」
樹が少し恥ずかしそうにする。
凪沙も笑った。
*
そういえば――
その夏、樹の家から凪沙の家には、お中元が届いていた。
樹の家は野津原で米作りをしてて、袋いっぱい届いた。
凪沙の家でも、
「せっかくじゃけん、こっちからも佐賀関のもんを返そう」
と、海のものを選んで送っていた。
山から届いたお米。
海から届いた恵み。
暮らしている場所は違う。
野津原と佐賀関。
山と海。
けれど、少しずつ互いの家に、相手の土地のものが届くようになっていた。
凪沙はもらった貝殻のキーホルダーを握りしめる。
「これ、バッグにつけてもいいかな」
「もちろん」
「ありがとう」
凪沙が笑う。
樹はその横で、少し照れながらそのキーホルダーを見ていた。
自分が大切にしている海の記憶が、今度は革の貝殻になって、凪沙の手の中に残った。
そして二人の間には、海と山をつなぐ小さな贈り物が、またひとつ増えた。

