電子の歌姫は今宵も言葉を紡ぐ

たぶん、あの日のことは人生の中で忘れることはないだろう。

それほどまでに、衝撃的な出会いだった___。

☆     ☆     ☆

あれは、入学して少し経った⋯⋯五月くらいの日。

入学式の頃には満開だった桜も散り始めて、緑色に溢れてきそうな日だった。

僕は、もともと学校という場所に少し苦手意識があった。
言ってしまえば、人との関わりが苦手だったんだ。

両親は元芸能人で、自分もそれなりに顔が整っていることは小学生の頃くらいから自覚していた。

⋯⋯その顔から、女子が寄ってくることも。



「見て、紡くん今日もかっこいいねっ⋯⋯!」

「わかる〜! いつ見てもお人形さんかと思っちゃうくらいかわいいし、かっこいいよね!」



はあ⋯⋯入学してから少ししか経ってないっていうのに、どいつもこいつもかっこいい。かわいい。かっこいい。

まったく⋯⋯それしか言えないのかよ。

正直、影でこそこそとキャーキャー言っている女子には呆れていた。

だからこそ⋯⋯僕の隣で、ずっと静かに本を読んでいる彼女が気になったんだ。