電子の歌姫は今宵も言葉を紡ぐ

そして、そっとピアノの鍵盤蓋を開けてゆっくりと椅子に座る。

今日は⋯⋯どの曲にしよう。⋯⋯そうだ、この間聴いてみたボーカロイド曲でも弾こうかな。

頭の中で再生される曲のメロディを楽譜に変換しながら、音を紡ぐ。



「___♪」



そのまま、自分の歌声を交えた。

やっぱり、歌うことは、楽しいっ⋯⋯!

歌うことは好きだけど、みんなの前で歌うなんて無理だし、そもそも歌声を学校の人に聞かれてしまうこと自体
が恥ずかしい。

好きなことではあるけど、だからこそ隠したい、そんな感じだ。

学校というみんなと勉強しなくちゃいけない空間の中で、この時間帯の音楽室にいるときだけ、私はありのままの自分をさらけ出せる。

だから、このことを先生たちに話さないでいてくれている叔母さんには感謝しかない。

好きなことをしていたからなのか、はたまた夢中になりすぎていたのか。

私はピアノの音と自分の歌声しか、耳は音を拾わなかった。だから⋯⋯。



「___うっま⋯⋯」



⋯⋯そんな男の子の声に気づくことが、できなかったんだ。