電子の歌姫は今宵も言葉を紡ぐ

だから、クラスメイトからもきっとほとんど存在を忘れられているだろう。

玲香に話しかけられたことによって鼓動が速くなった心臓を鎮めながら、私の足は音楽室へと向かい始めた。

___コンコンコン。

「失礼、します⋯⋯」

「はあ⋯⋯千星、これで無断で音楽室に入るのは何回目? 特に用事が無い生徒は速やかに帰るようにって担任の先生から聞かされてないの?」

「聞いてはいる、よ⋯⋯? 私、れっきとした用事、あるもん」

「はいはい。じゃあ、あたし席外すからね? 練習が終わったのならすぐに帰りなさい」

「はぁい」



今話していたのは、音楽の先生。⋯⋯という名の、私の叔母だ。

叔母さんは私のお母さんの妹であり、私の『秘密』を知っている数少ない人物のうちの一人だ。

時々⋯⋯というより、ほとんど毎日、学校の授業が終わってからこうして一人で音楽室に入って『練習』を行っている。