電子の歌姫は今宵も言葉を紡ぐ

「っ、私の、生徒手帳⋯⋯?」



紡さんの手に持たれていたのは、表紙に私の名前が書かれてある、正真正銘私の生徒手帳だった。

あ、あれっ⋯⋯?

落とした記憶は無いはずなのに、いつも生徒手帳を入れているカーディガンのポケットに手を入れても生徒手帳が入っていそうな感覚は全くない。



「そう! せいか〜い! びっくりしたよ〜。だって、僕が声出した途端に千星ちゃんが走って帰っていこうとして〜⋯⋯そして、この手帳を落としていったんだから」



そっか⋯⋯私が、走った拍子に生徒手帳を落としちゃったんだ。

生徒手帳には校則の他にも自分自身の名前や写真、クラスまで書かれているから、どうやって紡さんが私の名前を知ったのかがこれで理解ができた。

でも、生徒手帳を拾っただけなら、ただ返せばいいはず。

なのに⋯⋯なんで紡さんはわざわざ玲香に保健室から出てほしいとお願いしたんだろう⋯⋯?



「それでね、僕、千星ちゃんにお願いがあって来たんだ〜」

「お願い⋯⋯?」

今まで私は目立ったようなことを学校でしたことはない。

テストの成績だって中くらいだし、体力はほとんど皆無、どこか秀でているものがあるわけでもない。