電子の歌姫は今宵も言葉を紡ぐ

玲香は私にそれだけ告げてから、保健室を出ていった。
お兄ちゃんも結構過保護な気がするけど⋯⋯玲香も、私に対してたいそう過保護だよね⋯⋯。

⋯⋯私の周りの人って、過保護な人が多いのかな?



「ふぅ⋯⋯これで二人になれたね、千星ちゃんっ」
紡さんにそう言われたことで、私はもう忘れてしまいそうになっていた一つの違和感を思い出した。

「あの⋯⋯なんで、私の名前⋯⋯知っているん、ですか」



そう。私は少なくとも紡さんに会ったことや話したこと、ましてや名前を教えたことなんて一度もない。

なのに、なんで私の名前を知っているんだろう⋯⋯?



「あれ〜? 千星ちゃん、昨日のこと、覚えてないの〜?」

⋯⋯昨日?

昨日⋯⋯昨日⋯⋯確か、帰り支度を済ませた後にいつも通り音楽室に行って、ピアノを弾きながら歌っていて⋯⋯それで⋯⋯⋯⋯っ、あ⋯⋯。

そうだ⋯⋯誰かに私の歌声を聞かれて、そのまま走って家に帰っちゃったんだった⋯⋯。

もしかして⋯⋯まさかっ⋯⋯!



「⋯⋯ねぇねぇ千星ちゃん。これ、何かな〜?」