軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜




「軍……医?」

「帝国医学部卒の軍医少佐で、将来を嘱望されている人物だ」

 凪の顔色が一気に変わる。

「兄様が帰ってくるまでは、ここに残ります!」

 すると、源一郎は無言になる。
 代わりに翠がこの場に似合わない笑みを浮かべる。

「凪さん。そのことなら、もういいのよ」
「よくありませんっ! 私が麒麟堂を守ると兄様と約束したんですから……!」

 翠は呆れるように小さく息を吐いた。そして帳場の引き出しから一通の手紙を取り出した。

「あなたったら、大切なお知らせをしまい込んだままにして」

 源一郎は翠が手にしている手紙を一瞥すると、すぐに目を伏せてしまった。
 翠はコツコツとハイヒールを鳴らして凪の前に立つ。そして、手紙を開いて見せた。
 その紙に記されているある文字が、凪の目に飛び込む。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 謹啓

 貴家ご子息 朔也殿は、○月○日、○○方面における衛生勤務中、戦死されました。生前の御勤務に対し深く敬意を表するとともに、謹んで哀悼の意を表します。ここにご通知申し上げます。

 陸軍○○連隊            
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(戦死────)