賑やかな歓声と甘いポップコーンの香りが漂う遊園地。



大所帯だった8人のグループは、それぞれの想いを胸に、それぞれのペアやグループに分かれて行動を開始した。





~王子&環奈~

観覧車へと続く並木道を並んで歩きながら、王子は意を決したように隣を歩く環奈に話しかけた。



「環奈ちゃん、今日はどうしても環奈ちゃんと2人で回りたくて誘ったんだ」



「ありがとう、王子くん。嬉しいな」



少し柔らかい空気が流れたが、環奈はふと真剣な表情になり、自分の胸の内を正直に打ち明けることにした。



「あのね、王子くん……私、いま王子くんと柊人くんの間で、すごく気持ちが揺れてるの」



環奈の口から飛び出した正直な告白。



しかし、王子はその言葉に少し焦りを感じてしまったのか、強引に自分の想いを押し付けてしまう。




「揺れてるなんて言わないでよ。俺は今日、ほかの誰でもなく、環奈ちゃんが好きなんだからさ」



――その言葉を聞いた瞬間、環奈の表情からふっと笑顔が消えた。



自分の悩みを受け止めてくれるのではなく、ただ自分の気持ちを押し付けられたような気がして、胸の奥にあった期待やときめきがスッと冷めていってしまうのを感じる。



「そっか……」



環奈の返事は、最初よりも明らかに素っ気ないものに変わっていた。





~柊人&奈々波~

観覧車のふもとでは、柊人と奈々波が並んで歩いていた。



元々すみれからも気になられていた柊人だったが、彼の心はもう決まっていた。



「奈々波ちゃん。……奈々波ちゃんがちょっと気になり始めてる気がする」



まっすぐに想いを告げる柊人だったが、奈々波の心にはすでに別の存在が深く刻まれていた。



昨日、慧との一件や様々なやり取りを経て、奈々波の心に決まったのは翔だった。



「柊人くん、気持ちはすごく嬉しい……。でも、ごめんなさい。私、心に決めた人がいるの。翔くんのことが好きなの」



ハッキリとした拒絶の言葉に、柊人は息を呑む。



しかし、奈々波の瞳があまりにも真剣だったからこそ、それ以上引き下がることはできなかった。



「そっか……。フラれちゃったな」



「ごめんね、柊人くん。だから、私のことはもう諦めてください」



その言葉は冷たく聞こえるかもしれないが、奈々波なりの誠実さだった。



柊人は苦笑いを浮かべながらも、その真っ直ぐな強さにどこか納得せざるを得ないのだった。





~颯真&優羽梨~

少し離れたアトラクションのエリアでは、颯真と優羽梨がチュリトスを片手に歩いていた。



「優羽梨ちゃん、誘えてよかった。楽しんでる?」



「うん! すごく楽しいよ、颯真くん」



笑顔を見せる優羽梨だったが、実は内心で複雑な焦りを覚えていた。



本当は、私は颯真くんのことが好きなのに……どうして素直に言えないんだろう。



本当は颯真に夢中なはずなのに、目の前の優しい彼を前にすると、なぜか素直になりきれない。



「あのね、颯真くん……私、今ね、颯真くんと王子くんの間ですごく揺れてるの」



あえて別の名前を出してしまった優羽梨に、颯真は少し寂しそうな、でも優しい笑顔を向けた。



「そっか……。教えてくれてありがとう。俺も頑張らないとね」



その優しさに触れるたび、優羽梨の胸はキュッと締め付けられるのであった。





~翔&美愛~

メリーゴーランドの近くのベンチに腰掛けたのは、翔と美愛だった。



「美愛ちゃん、こうして2人で話したかったんだ」



「私も、翔くんと話したいって思ってたから嬉しい」



お互いに第一印象から名前を挙げ合っていたふたり。



少し照れくさい空気が流れる中、翔が先に口を開いた。



「俺さ、最初は美愛ちゃん、優羽梨ちゃん、環奈ちゃんの3人が気になってて……でも、こうして話してると、やっぱり美愛ちゃんを目で追っちゃうんだよね」



翔の真っ直ぐな言葉に、美愛は嬉しそうに頬を赤らめながらも、自分の抱えていた迷いを打ち明けた。



「ありがとう、翔くん……。実は私も、翔くんと柊人くんでずっと悩んでるの。どっちも同じくらい気になってて……」



お互いに複数の気になっている存在を抱えながらも、隠さずにすべてを打ち明け合うふたり。



隠し事のない素直な会話は、お互いの距離をぐっと縮め、それぞれの胸に新たな予感を芽生えさせるのであった。