ふたりきりになったテラスの席で、すみれは少しドキドキしながらも、まっすぐな瞳で龍之介を見つめた。



「ずっと会いたかったんだ。嬉しい! 一瞬だったけど、第一印象とかいた?」



「うん、いた。言っていいの?」



「うん! も・し・か・し・て……、わた……」



自分の名前を呼ばれることを期待して、すみれは思わず身を乗り出した。



しかし、龍之介の口から紡がれたのは、全く予想外の名前だった。



「ひまりちゃん。優しそうだった。思いやりがありそうな子だったというか、絶対にあると思った。初めて恋をした」



「……え?」



笑顔がピタリと凍りつく。



自分に向くと思っていた矢先の「ひまり」という名前。



しかし、プライドの高いすみれは、すぐに強気な笑みを作って言い返す。




「へぇ~。でも、私はもっと優しいし、その上、可愛いよ?」



「でも、俺はひまりちゃんだから。可愛いって思うのは」



龍之介は一切揺らぐことなく、きっぱりと言い切った。



その真っ直ぐすぎる言葉に、すみれは悔しさを滲ませながらも、負けじと闘志を燃やす。



「私、もっとアピールするから!」



「ありがとう。考える。でも、ひまりちゃんが好きってことは知っといて」



龍之介のブレない姿勢を目の当たりにし、すみれは自分のプライドと恋心の板挟みに揺れながらも、この恋の波乱がさらに大きくなることを確信するのであった。