朝デートを終えた慧とひまりがホテルへ戻ると、リビングには他のメンバー11人が集まっていた。
ふたりが並んでソファーに腰掛けるやいなや、奈々波が身を乗り出して尋ねる。
「ねえ、朝デート、何したの?」
「ん? プール入ったよ」
慧が何気ない調子でさらっと答えると、リビングの空気が一瞬で凍りついた。
「え、ぷ、うぷぷぷぷぷう、プール⁉ てことは、水着⁉」
「えーーーー!!!! もう、一線を越えちゃ……って、何するのよ環奈ちゃん!」
「それ以上は言っちゃだめ、美愛ちゃん」
環奈の暴走を美愛が慌てて制止し、周囲が一気にざわめく。
その脇で、奈々波はひまりの耳元にそっと顔を寄せ、小さな声で探るように聞いた。
「ねえ、どんな水着だったの?」
「……真っ黒のビキニ、だった」
ひまりが恥ずかしそうにボソッと答えると、奈々波は「黒のビキニ……!」と目を見開いて絶句した。
その時、リビングのドアがガチャリと音を立てて開いた。
視線が一斉に入口へと向けられる。
そこに立っていたのは、この旅の空気を一変させる、新たな人物だった。
「おはようございます、龍之介です。途中参加ですが、よろしくお願いします」
爽やかな笑顔を浮かべて現れたのは、あの龍之介だった。
すみれとひまりが、この旅の初日から「会いたかった」と名前を挙げ続けていた本人が、いま目の前にいる。
「……っ!」
すみれは一瞬たりとも迷わず、すぐに龍之介のもとへと駆け寄った。
「龍之介くんに来てほしかったです。私、ずっと会いたかったの!」
まっすぐに想いをぶつけるすみれの横で、奈々波は隣に座るひまりを鋭い目で見つめ、無言のプレッシャーを送る。
——あんたも行きなさいよ!
そう視線で訴える奈々波だったが、ひまりは動揺のあまり体が固まってしまい、どうしてもその一歩を踏み出すことができなかった。
そんなひまりの複雑な表情を、慧は少し離れた場所からじっと見つめていた。
「あの、来たばかりで申し訳ないんですが……一緒に話に行きませんか?」
すみれに誘われ、龍之介がうなずく。
ふたりがリビングを離れていくのを見送りながら、ひまりは小さく肩を落とし、目に見えて落ち込んでしまった。
沈み込むひまりの様子に気づいた慧は、すっと立ち上がると彼女のそばに歩み寄り、優しく声をかけた。
「ねえ、ひまり。ちょっと気分転換しに行こうよ」
その温かい誘いと言葉に、ひまりは驚いたように顔を上げるのだった。



