通りすがりの俺様

「すまん。
 間違えた。

 お前の次に新品のボールペンが好きだ」

 あなたの心の中の新品のボールペンの位置がわかりません。

「水内くん」
 
 通りかかって聞いていたらしい高石が言う。

「そんなに頻繁に好きだ好きだ言ってたら、ありがたみがなくなるわよ」

「いや、これは罠なんですよ、高石さん」
と一鷹は彼女に向き直り、説明しはじめた。

 あの、どんな罠なんだか知りませんけど。
 それを私の前で威張って発表して大丈夫ですか?

「ずっと好き好き言っていた男がある日、突然、言わなくなる。
 すると、寂しく感じるものです」

「言わなくなるの?」

「近いうちに出張に行くので。
 あと、風邪ひいて声が出なくなったら言わないかもしれないですね」

 なんか違う……。

「あと、実は好きとか嫌いとかよくわからないので。
 好き、と声に出しては、違和感ないな、と思うことで、俺、こいつのこと好きなのかな、と確認しているというか」

「好きだと言わなくなるとかどうとか以前に、今のでドン引きよ」
と高石が言った。

 いやまあ、そんなものだろう、といずるは思っていた。