通りすがりの俺様

 「矢端さんのうさぎさん、見たかったです」

 エレベーターを降りたあと、一鷹にいずるは言った。

 ちなみに、矢端はもう自分の部署に行ってしまっている。

「あいつが送ってくるのは、なに考えてんのかわかんない感じのうさぎだ。
 笑顔で言うことがちょっとあれなあいつそのままの凶悪なうさぎだ」

 総務本部を見ながら一鷹はそう言った。

「よし。
 ここまで来たから、ボールペンでももらって行くか」

「いや……いらないのなら、もらわないでくださいよ。
 あ、でも、備品倉庫って入るとワクワクするんですよね。

 お店みたいに文房具とかがズラッと並んでるじゃないですか。
 小学校の体育館の、普段は入れない倉庫に入ったとき、新品の掃除道具がたくさんあって、ドキドキしたのを思い出します」

「新品の掃除道具でドキドキするか?」

 すごく掃除させられそうじゃないかと一鷹は言う。

「デッキブラシとかドキドキしますよ。
 新しいのが入ってくると、男子と取り合いになってましたから」

「よく掃除するいい嫁になりそうだな」

「それが家では掃除しないんですよね」

「毎日、新品の掃除道具を買い与えたら、毎日掃除するんじゃないか?

 俺は新品のボールペンが好きだ。
 なんかすごい論文が書けたり、すごい仕事ができたりしそうじゃないか」

 今時はそのどちらもパソコンでやるんじゃないですかね?
と思っていると、一鷹は、

「新品のボールペンの次にお前が好きだ」
と言い出した。

 ……それはどういう立ち位置なんでしょう?