通りすがりの俺様

「えっと、……そういうわけでは。
 単にスタンプだと画面が華やかになるかなと思って」

 確かに急いでいるとき、スタンプですませることもあるが、別に面倒臭いからというわけではないしな、と思いながら、いずるはそう言った。

 エレベーターに乗りながら、一鷹が言う。

「お前と結婚するはずが、妙な物体と結婚する夢を見た。
 白くて丸いのとか、クマとか」

 いずるは笑う。

「それちょっとわかる」
とエレベーターの中から声がした。

 駐車場から上がってきたらしい人たちの中に矢端もいたようだ。

「よく送ってくるスタンプの顔とか人となりが、その人本人みたいに思っちゃうんだよね」

 ……白くて丸いのとか、クマの人となりってなんだ。

 一鷹が、
「そう!
 だから、俺の中でお前はうさぎなんだよっ」
と矢端に言う。

 矢端さん、うさぎのスタンプなんだ……?

 そう思ったのが伝わったのか。

「送ろうか?」
と矢端が背の低いおじさん越しにこちらに話しかけてくる。

「送らなくていい」
と一鷹が勝手に答えていた。