「そうじゃない」
朝、ロビーで一緒になった一鷹にいきなり、そう言われ、ひっ、といずるは固まる。
「スタンプ連打やめろ」
「は?」
と言いながら、いずるは一鷹とともにエレベーターに向かった。
「あの、今日は呑み会でもあるんですか?」
「なんでだ」
「地下の駐車場からじゃなくて、ここからエレベーターに乗られるみたいなので」
「探偵か」
違う。
お前を待ってたんだ、と言われて、いずるは、ちょっと赤くなる。
「そういえば、藤間の親もお前のことを名探偵だと言っていた」
「ああ、藤間くんちが何者か当てたからですね。
いや、あれは単に調べたからわかったんですよ」
推理じゃない、といずるは言った。
一鷹は自分で話を振っておいて、そこのところはどうでもいいようで、これこそが本題だとばかりに言ってきた。
「……メッセージにスタンプだけで返してくるのやめろ」
ええっ?
なにめんどくさいこと言い出したんですか、といずるは思ったが、
「ちょっとでもお前自身が打った言葉が欲しいから」
と一鷹が言う。
だから、何故あなたはそういう照れるようなことをズバズバ真顔で言ってくるんですか……。
私は免疫がないので、やめてください。
「まあ、無理はしなくていいんだが。
俺にはちょっとの文字を打つのも面倒臭いのかとか思ってしまってな」
意外に自信がないのだろうか。
パッと見、自信満々な人なんだが。



