通りすがりの俺様

「藤間くんのママは藤間くんが自慢の息子みたいで。
 うちの息子と知り合えば、きっと恋に落ちるに違いないわと思ってたみたいなんですよね」

 それで、私を軽く自転車に向かって突いたんです、といずるは言った。

「……平和すぎるな」

「あのような敵ばかりだといいのですが」

「まあ、藤間の家族にはよく言っておけ。
 お前には俺という似合いの彼氏がいるんだと」

「言わないですよ」

「何故だ……」

 いや、何故だって、何故だ。

目眩(めくらま)しにいいだろう」

「でも、あなたに迷惑がかかりそうだから、嫌です」

「幾らでもかけろ。
 お前は俺が出会った中で、一番俺が好きになったような気がする女だからだ」

 どうして、そこ、冷静っ?
 せめて、言い切ってっ。

「まあ、なにかあったら、俺を頼れ」

 そう言いながらも、一鷹はちょっと迷うような顔をしていた。

 やはり、こんな危険な状況にある女には関わらない方がいいと思っているのだろうかと思っていると、一鷹は、
「今、俺は迷ってるんだ」
と自分で言ってきた。

 これで離れられても仕方ないかな。
 水内さんも被害にあったら困るし。

 そういずるが思ったとき、一鷹が言った。

「やっと自宅に招き入れてもらったんだ。
 ここでお前になにかするべきなのか。

 いや、それとも、なにもしない方が次回からも家に上げてもらえるのか――。

 さっきからずっと迷ってるんだが、どっちが正解だ?」

 真面目な顔で私の話を聞きながら、そんなこと考えてたんですかっ!?
と思ういずるの前で、真剣な表情で一鷹が呟く。

「据え膳食わぬは男の恥と言うし」