そのころ、いずるは街にいた。
古い店と店の間の薄暗く狭い路地を見つめる。
「いずるー?」
と友人たちに呼ばれ、ああはいはい、と急いでみんなを追いかけた。
いずるが家に帰ると、門の前に一鷹が立っていた。
「おかえり」
と言う。
「今日は兄はいなかったんですか?」
といずるは灯りがついたままの家を見た。
兄が窓からこちらを覗っている様子はない。
兄がいたら、一鷹に気づくはずだった。
「藤間史夫に会った」
「……お上がりになりますか?」
といずるが言うと、一鷹は、
「俺一個分のなにかを捨てたのか?」
と言う。
「兄か?」
いずるは一鷹をチラと見て言った。
「兄の方がちょっと大きいですかね」
「今日から牛乳飲むよ」
いや~、デカけりゃいいってもんじゃないですけどね、と思いながら、
「どうぞ」
といずるは一鷹を玄関に通した。



