「いずるさんは――
小さなつづらを手に入れたんですよ」
僕が何処まで話していいのかわかりませんけど、と藤間は言う。
近くにあった、ちょうど話をしやすそうな居酒屋を入ろうかと思ったのだが。
居酒屋を見るその視線を追った藤間が、いや……と苦笑いしたので、遅くまでやっている喫茶店に入った。
居酒屋に家族で行くこともあるらしいが。
さすがに見知らぬ――
まあ、向こうは知っていたようだが、
見知らぬ男と高校生が二人で居酒屋に、というのは、ちょっと補導されそうだったからだろう。
「いずるさんのお父さんがいい例えをされたそうです。
『小さなつづらでももらったんじゃないか?』と。
いずるさんが生前分与でもらったその小さなつづらの中身を嗅ぎつけた連中が彼女を狙ってるんですよ。
……うちの親とか」
すみません、と藤間は頭を下げてきた。



