通りすがりの俺様

 だが、まあ、確かに美味いっ、デミグラスッ。
 やはり間違いなかったっ、と味わって食べながら、いずるは言った。

「そういえば、この間、スーパーで買った明太子、よく見たら『減量した明太子』って書いてあったんですよ。

 素直に白状してるなって思ったんですけど。
 もう一回見たら、減塩だったんですよね」

「よく見てないじゃない」
と網代木が言い、

「確かに最近のは減量してるよね~」
と晴菜が笑った。

「あ、そうだ、網代木さん。
 私、この間、各部署に健康に関するアンケートの紙、配って歩いたんですけど。
 事業部にも持っていきましたよね?」

「なんで私に訊くの?」

 あんたの行動、いちいち見張ってないわよ、と言われたのだが。

「いや――
 私のこと、よく見てらっしゃるので」

 よく見てケチをつけて来られるので、という言葉をいずるは飲み込んだ。

「事業部の川西さんが、そんなのもらってないっておっしゃるんですよ。
 確かに渡したと思うんですけどね」

「ああ、川西節子?
 そりゃ、嫌がらせでしょ」

「なんでですか?」
「あいつ、矢端さんのファンだから」

「私、矢端さんとはそんなに接点ないですよ。
 むしろ、晴菜の方が二人でエレベーター乗ったりしてるのに」

 いきなり私を売るなっという顔で晴菜がいずるを見た。

 そういえば、一鷹から矢端に乗り換えた小野寺が、じっと晴菜を見ている。