通りすがりの俺様

「お前が俺におごってくれるのは、お前の時間だ」

「……言ったあと、照れるのなら、言わないでください」

「矢端の真似をしてみたんだが、心臓に悪いな」
と一鷹は赤くなって言っている。

「あんなにつるつる口から照れるようなセリフが出る人、怖いですよね」

 最終兵器です、と言いながら、結局、珈琲をおごってもらう。

 二人、日が当たってぽかぽかする白い壁の前で缶コーヒーを飲んだ。

「昨日、兄がいました」
「え?」

「家の中に、兄がほんとうにいました。
 そして、両親もいました」

「じゃあ、ご挨拶するべきだったな」

 ……なんてするつもりなんですか?
と思いながらいずるは言う。

「あなたのこと、生前分与のあとから、急に接近してくるなんて怪しい奴だと言っていました」

「急に愛に目覚めたんだ」
とこれ以上ないくらい怪しいことを一鷹は言い出す。

「――ちょうどチャンスだと思った。

 以前、渡り廊下で、それでいいのか、女子、と思うような大あくびをしていた女子社員が、呑み会に参加していた。

 話しかけたかったけど、近寄れなくて」

 近寄れなかった原因は、私ではなく、あなたの周りにいた女子社員のバリケードですけどね。