通りすがりの俺様

 



 次の日、別館ロビーを歩いていたいずるは、向こうから格好いい人が来るな~とうっかり思ってしまった。

 一鷹だった。

「お疲れ」
と言ってくる。

 あの呑み会で、いきなり声かけられてビクビクしちゃったけど。
 結構、好みではあるんだよな。

 ……もうちょっと距離をとってくれたら、といずるは晴菜どころか、網代木にまで、

「いやっ、距離とってどうすんのっ」
と言われそうなことを思いながら、お疲れ様です、と頭を下げる。

「珈琲でもおごってやろうか。
 自販機のだが」
と言ってくるので、

「いえ、結構です。
 おごっていただく理由もありませんし。

 むしろ、よく家まで送っていただくので、私がおごらないと――」
といずるは言った。

「じゃあ、おごれ」

 ちょうど時間があったので、はい、とそのまま外の渡り廊下の自動販売機まで行った。

 一鷹がそこの珈琲が飲みたいと言ったからだ。

 だが、いずるが珈琲を買おうとすると、横から一鷹がスマホを自動販売機に当てて勝手に払ってしまう。

「いや、私がおごるんですよね?」