通りすがりの俺様

「はは。
 小さなつづらでももらったんじゃないか?」
と父がなだめるように笑って言ったが、実はちょっとドキリとしていた。

 両親の座るソファの後ろに立つ兄が、
「俺の遺産は狙われていないのに……」
と愚痴のように言い、母が、

「私のもよっ」
と声を荒げる。

 待ってください。
 狙われたいのですか、あなたがたは――。

「もうっ。
 いずる、どんないいものもらったのよっ。

 私に寄越しなさいよっ」

「俺なら上手く管理してやるぞ、いずる」

 そう言う兄のあとに、父が穏やかに笑って言った。

「はは。
 やめなさい、お前たち。

 ――父さんだけはお前の味方だぞ、いずる」

 まず、家族に狙われているっ、遺産っ!

 いずるは、
「私もアイス食べようっと」
と言って、慌ててリビングから逃げた。