通りすがりの俺様

「いや、虫とかそんなんじゃなくて。
 どうも最近、私、誰かに狙われているみたいなんで。

 会社の人が心配して付いて来てくれたの」

 兄はこちらを冷ややかに見ながら言う。

「『いいえ、家には入れられません。
 最近、断捨離してるんで、物を入れないようにしてるんです、うち』

『俺一人分の物を捨てて、俺を入れろ!』
とかいう、お前にピッタリの訳のわからない男は彼氏じゃないのか」

「……なんで、全部聞いてるの」

 一鷹と親しくなったのは最近で。

 自分が狙われていることに真っ先に気づいてくれて、心配してくれているのだと言ってみたのだが――。

「いやいや、わかんないだろ。
 そいつが犯人かもしれない。

 急に接近してくるなんて怪しいじゃないか。

 ……あの生前分与の日から、おかしなことが起こってるんじゃないのか?」

 いずる、お前はなにをもらったんだ?
と兄に言われる。

「それ、言っちゃいけない約束でしょ?」

 誰がなにをもらったのか、身内でも知らないし。
 語ってもいけない。

 急に生前分与をすると言い出したことと言い、なにかのゲームのようだなと思っていたが。

 おそらく、祖父には、なんらかの目的があってやっているのだろう。

「まっ! 私たちは狙われてないのにっ。
 いずるだけ、なにかいいものをもらったってことかしらっ」
と突然母がアイスを食べながら(いきどお)る。