通りすがりの俺様

 

 仕事がはじまり、いずるが書類を持って別館に向かっていると、向こうから矢端と一鷹が話しながらやってきた。

 窓からの光が長身の美形二人に差し込み、普段の一鷹の無軌道ぶりも忘れて、見惚れてしまう。

 網代木さんが言うように、ほんとうに見ているだけなら申し分ないな、この人たち。

 そういずるが思ったとき、二人がこちらに気がついた。

「お疲れ様です」
といずるが挨拶をすると、

「昨日、大変だったんだって?」
 いろいろ物騒みたいだね、と矢端に言われる。

 一鷹は自分があまり社内にいないので、それとなく気をつけてくれるよう、矢端に頼んだようだった。

「大丈夫?」
と矢端に問われ、いずるは、

「まあなんとか頑張ってみます」
と不思議な答えを返してしまう。

 狙われている理由と狙ってくる人がまだ確定していないからだ。

 後をつけられたのは、社外。
 ロッカーを荒らされたのは、社内。
 自転車に向かって突き飛ばされたのは、社外。

「……敵がひとりとは限りませんしね」

 ぼそりとそうもらす、いずるに、
「……一体、なにと戦ってるの?」
と矢端が苦笑いして言ってくる。

「ありがとうございます。
 大丈夫です。

 うちの家訓は、やられる前にやれ。
 やる気配を感じただけでやれ、ですから」

「どんな家訓っ!?」

 凶悪すぎるんだけどっ?
と矢端に言われてしまう。

「カゴで戦おうとしたらしい一鷹といい勝負だね」

 一鷹はその話も矢端にしたようだった。

「まあ、どんな事件に巻き込まれてるのか、一鷹がボカしてしか言わないからわからないんだけど。
 一応、気をつけとくよ」

「すみません。
 細かい話ができなくて」
といずるは頭を下げた。

「いやいや、いいよ。
 他人にたやすくしゃべらない方がいいよ、そういうときは。

 僕だって信用できるかわからないじゃない」
と矢端が笑って言うと、何故か一鷹が衝撃を受けていた。

「俺も詳しく聞いてないっ。
 俺も信用されてなかったのかっ」

「えっ?
 あれ、ボカして言ってたんじゃなかったの?」

 ほんとうに知らないの?
と一鷹は矢端に訊かれている。