通りすがりの俺様

 

「俺がもらったのは、じいさんが付き合いで買った高額な自転車だ。
 なんかこう、前のめりにハンドル握るやつ」
と兄は言った。

 その説明のし方で既に、自転車に興味がないことが丸わかりだな、
といずるは思う。

「家族にもバレるなというんで、誰にも見せたことはないが」

「しゃべってるじゃん」
といずるが言うと、

「よく考えたら、相続争いに参加するなんて面倒くさいじゃないか。

 参加しないのなら、じいさんからの印象なんてどうでもいいから、ルールも破っても構わないだろ?

 あの自転車もいらないし」

「……将来、結婚して、奥さんが、その自転車あればよかったのにとか。
 なんて、遺産もらわないのとか言ってきたらどうするの?」

 兄は少し考えたあとで、
「そうか。
 そういうこともあるか。

 じゃあ、しゃべらなかったことにしよう」
と言い出した。

 どうやって?
と思ったが、

「お前ら二人を始末してしまえば、誰にも話してないことになるだろ」
と兄は笑顔で言う。

 ……遺産争いには参加しないとか平和的なことを言いながら、あなたが一番凶悪ですよ、といずるは思っていた。

 こういう本性を見るための生前分与だったのかなと思う。