通りすがりの俺様

 


「そういえば、私、パスタの巻き方が人と逆らしいんですよ」
「パスタの巻き方?」

 こう、フォークでくるくるする向きが、といずるは一鷹にやってみせる。

「鳴沢家の巻き方とか?」

「俺はそんな巻き方しないぞ」
とソファからこちらを見ている兄が言った。

 家にいたら、仕事が終わった一鷹が訪ねてきて。

 追い返そうと思ったのに、兄が上がれと言ったのだ。

 人ひとり分しか捨ててないのに。
 二人入ってもいいのかという顔を一鷹がしたが。

 いや、そもそも、まだゴミ捨ててないですからね、といずるは思う。

 いずると一鷹はガラスのローテーブルを挟んで、ラグの上に向かい合って座り、ソファに腰掛けた兄がそれを眺めているという状況だった。

「……み、南半球と北半球で巻き方が違うとか」

「……渦か。
 そもそも、お前は南半球に住んでんのか」

 俺たちと違うと言うことは、
と一鷹に言われる。

「マナー違反らしいんで、直そうとはしてるんですが。
 癖づいちゃってて。

 そもそも、私、なんで最初にそっちに回してみたんですかね?」

「さあ」

 いつもなら、一鷹とともに突っ込んできそうな兄がなにも言わないので、思わずそちらを見た。

 兄は感慨深げに、
「いや。
 昔、よくそうやって、テーブル挟んで友だちと座って折り紙とかやってたよな、と思って。

 それが今は結婚しようかという男と向かい合って座ってるとか……」
と言い出す。

「いやあのっ。
 水内さんはただの職場の方で、結婚とかいう話は出ていませんがっ」

「大丈夫だ。
 俺の妄想の中では出ている」
と一鷹がいずるに言うと、

「そうか。
 じゃあ、位置を変われ」
と兄が一鷹に言う。