「意外とグイグイ押してくねー」
別館のロビーで出会った矢端に一鷹はそう言われた。
さっき、渡り廊下の外を通っていて、話を聞いていたらしい。
「意外か?」
「仕事ではグイグイ行くけど、女性にはそんなことないような気がしてたんだけど」
「そうだな。
……お前はどっちにもグイグイ行くよな」
「そうだっけ?」
「ニコニコしながら、気がついたら、距離を詰められてる感じというか」
「そうだねー。
僕の中の心の壁はずっとあるんだけどね~」
……俺よりヤバイ奴だな、こいつ、と一鷹は思う。
「お前、鳴沢には興味ないんだよな」
矢端は小首を傾げて、
「僕はたぶんないけどね」
と言った。
なんか、ちょっと引っかかる回答だな、と思う。
二重の意味で引っかかる――。



