中休み。
日向は圭に頼まれたものを届けるため、二年生の教室がある階へ向かっていた。
廊下を歩いていると、少し先に人だかりができているのが見えた。
「……なんだ?」
なんとなく足を止める。
その中心にいたのは――
「綾花先輩?」
綾花だった。
その前には、少し困ったような顔をした女子生徒がいる。
「どうしたの?」
綾花が優しく声をかける。
「……部活のことでちょっと」
「そっか」
綾花は急かすことなく、その子の話を聞いている。
「それは大変だったね」
「うん……」
「でも、ちゃんと自分の気持ち伝えたほうがいいと思うよ」
「でも、迷惑かなって」
「迷惑じゃないよ」
綾花は笑った。
「言わないまま後悔するより、ちゃんと伝えてみたほうがいいと思う」
「……うん」
「大丈夫。ちゃんと話せば、きっと分かってくれるよ」
女子生徒が小さく頷く。
「ありがとう、綾花先輩」
「ううん。頑張ってね」
「はい!」
女子生徒が去っていく。
綾花はその背中を見送った。
日向はその場から動けなかった。
いつもの綾花とは少し違って見えた。
普段は笑っていて、ふわっとしていて。
ちょっと天然で。
自分が何を言われても、いつも笑ってかわしていく。
でも。
「……ちゃんとしてるんだ」
思わず口からこぼれた。
「何が?」
「うわっ」
突然後ろから声をかけられて、日向が振り返る。
そこには圭がいた。
「圭……」
「何してんの?」
「いや、別に」
「……綾花先輩見てた?」
「見てない」
「いや、めっちゃ見てたじゃん」
「うるさい」
圭がニヤニヤする。
「何?また好きになった?」
「……」
日向は少し黙った。
「……うん」
「え、認めるん?」
「だって」
日向はもう一度、綾花を見る。
「可愛いだけじゃないじゃん」
「は?」
「ちゃんとしてるし」
「今さら?」
「俺、知らなかった」
圭は少し笑った。
「まあ、綾花先輩そういう人だからな」
「……もっと知りたい」
「何を?」
「先輩のこと」
日向はそう言って、少し笑った。
「もっと知りたい」
その日の放課後。
廊下で綾花とすれ違った。
「あ、松宮くん」
「綾花先輩」
「今日もお疲れさま」
「お疲れさまです」
いつものように笑う綾花。
日向は少しだけ見つめる。
「……何?」
「いや」
「?」
「先輩って、ちゃんとしてますよね」
「え?」
綾花が目を丸くする。
「急にどうしたの?」
「なんとなく」
「変なの笑」
綾花は笑って、そのまま歩いていく。
日向はその背中を見ながら、小さく笑った。
――やっぱり。
もっと知りたい。
可愛いところも。
優しいところも。
まだ自分の知らないところも。
日向は圭に頼まれたものを届けるため、二年生の教室がある階へ向かっていた。
廊下を歩いていると、少し先に人だかりができているのが見えた。
「……なんだ?」
なんとなく足を止める。
その中心にいたのは――
「綾花先輩?」
綾花だった。
その前には、少し困ったような顔をした女子生徒がいる。
「どうしたの?」
綾花が優しく声をかける。
「……部活のことでちょっと」
「そっか」
綾花は急かすことなく、その子の話を聞いている。
「それは大変だったね」
「うん……」
「でも、ちゃんと自分の気持ち伝えたほうがいいと思うよ」
「でも、迷惑かなって」
「迷惑じゃないよ」
綾花は笑った。
「言わないまま後悔するより、ちゃんと伝えてみたほうがいいと思う」
「……うん」
「大丈夫。ちゃんと話せば、きっと分かってくれるよ」
女子生徒が小さく頷く。
「ありがとう、綾花先輩」
「ううん。頑張ってね」
「はい!」
女子生徒が去っていく。
綾花はその背中を見送った。
日向はその場から動けなかった。
いつもの綾花とは少し違って見えた。
普段は笑っていて、ふわっとしていて。
ちょっと天然で。
自分が何を言われても、いつも笑ってかわしていく。
でも。
「……ちゃんとしてるんだ」
思わず口からこぼれた。
「何が?」
「うわっ」
突然後ろから声をかけられて、日向が振り返る。
そこには圭がいた。
「圭……」
「何してんの?」
「いや、別に」
「……綾花先輩見てた?」
「見てない」
「いや、めっちゃ見てたじゃん」
「うるさい」
圭がニヤニヤする。
「何?また好きになった?」
「……」
日向は少し黙った。
「……うん」
「え、認めるん?」
「だって」
日向はもう一度、綾花を見る。
「可愛いだけじゃないじゃん」
「は?」
「ちゃんとしてるし」
「今さら?」
「俺、知らなかった」
圭は少し笑った。
「まあ、綾花先輩そういう人だからな」
「……もっと知りたい」
「何を?」
「先輩のこと」
日向はそう言って、少し笑った。
「もっと知りたい」
その日の放課後。
廊下で綾花とすれ違った。
「あ、松宮くん」
「綾花先輩」
「今日もお疲れさま」
「お疲れさまです」
いつものように笑う綾花。
日向は少しだけ見つめる。
「……何?」
「いや」
「?」
「先輩って、ちゃんとしてますよね」
「え?」
綾花が目を丸くする。
「急にどうしたの?」
「なんとなく」
「変なの笑」
綾花は笑って、そのまま歩いていく。
日向はその背中を見ながら、小さく笑った。
――やっぱり。
もっと知りたい。
可愛いところも。
優しいところも。
まだ自分の知らないところも。



