放課後。
綾花は部活へ向かい、凛花は教室で帰る準備をしていた。
そのとき、廊下を歩いている日向が目に入った。
「松宮くん」
「ん?」
日向が振り返る。
「藤森先輩」
「ちょっといい?」
「もちろん」
凛花は日向を廊下の端へ呼ぶ。
「綾花のことで聞きたいことがある」
「はい」
凛花は少しだけ日向を見る。
「松宮くんって、綾花のどこが好きなの?」
日向は少しも迷わなかった。
「全部です」
「……全部?」
「はい」
凛花が少し驚く。
日向はそのまま続けた。
「最初に会ったときから、可愛いなって思いました」
「うん」
「でも、話してみたら、思ってたよりずっとしっかりしてて」
「……うん」
「誰にでも優しいし、話してると楽しいし」
日向は少しだけ笑う。
「笑ったとき、めちゃくちゃ可愛いし」
「あと、なんか……一緒にいると落ち着くんですよね」
「落ち着く?」
「はい」
日向は少し照れたように笑った。
「俺、普段こんなに一人の人のこと考えないんですけど」
「……」
「先輩のことは、ずっと考えちゃう」
凛花は黙って聞いている。
「朝会ったら嬉しいし」
「うん」
「話せたら嬉しいし」
「うん」
「他の男の人と話してたら、普通に嫌だし」
「……嫉妬するんだ?」
「しますよ」
日向は即答した。
「めちゃくちゃします」
凛花は少し笑った。
「チャラ男なのに?」
「チャラ男だからって、好きな人に嫉妬しないわけじゃないですよ」
「……それもそうか」
日向は少しだけ黙ってから、凛花を見る。
「だから、遊びとかじゃないです」
凛花はしばらく黙っていた。
そして、
「……でも、聞いていい?」
「はい?」
「この間、一緒に帰った時って何かあった?」
日向の顔が少し緩む。
「ああ……ありました」
「何?」
「俺から聞いたんです」
「何を?」
日向は昨日のことを思い出す。
「先輩に、俺のこと好き?って」
「……え」
凛花が目を丸くする。
「そしたら」
日向は笑いながら話す。
「先輩、何も考えずに『好きだよ』って言ったんですよ」
「……あや、言いそう」
「俺も一瞬、何が起きたか分かんなくて」
日向は少し笑う。
「『え!?』ってなりました」
「ふふっ」
「そしたら先輩が」
日向は少し悔しそうな顔をする。
「『後輩としてね』って」
凛花が吹き出した。
「やっぱり!!」
「笑わないでくださいよ」
「だって、あやすぎるんだもん笑」
「俺、普通に喜んだんですよ?」
「うんうん笑」
「めちゃくちゃ嬉しかったのに……」
日向はため息をつく。
「一瞬で落とされました」
凛花は笑いながらも、少しだけ日向を見る。
「でも、それでも好きなんだ?」
「はい」
今度も即答だった。
「むしろ、もっと好きになりました」
「……なんで?」
「いつか、その『後輩として』を変えたいから」
凛花は黙った。
日向はまっすぐ前を見ながら言う。
「俺、先輩にちゃんと男として見てもらいたいです」
凛花はしばらく日向を見つめる。
そして、小さく息を吐いた。
「……分かった」
「信じてくれます?」
「少しだけね」
「少しだけ?」
「まだ松宮くんのこと、よく知らないから」
「じゃあ、これから知ってください」
「……ふふ」
凛花が笑う。
「そういうところは、やっぱりチャラいね」
「え、今の結構真面目だったんですけど」
「分かってるよ」
凛花は少しだけ笑って、
「でも、思ってたよりちゃんとしてた」
「ありがとうございます」
「ただし」
凛花の表情が真剣になる。
「綾花を泣かせたら、絶対許さないから」
「分かってます」
日向は迷わず答えた。
「俺が泣かせたくないですから」
そのとき。
「りーん!」
廊下の向こうから綾花の声が聞こえた。
「あや!」
綾花が二人のところまで駆けてくる。
「何話してたの?」
凛花と日向が顔を見合わせる。
「秘密」
「えー!」
綾花が不満そうな顔をする。
「松宮くんも?」
「はい、秘密です」
「もう、二人して何なの笑」
綾花が笑う。
その笑顔を見ながら、凛花は思った。
――この子を好きになるのも、ちょっと分かるかも。
そして日向は。
――やっぱり、この笑顔が好きだ。
そう思いながら、綾花の隣を歩いた。
綾花は部活へ向かい、凛花は教室で帰る準備をしていた。
そのとき、廊下を歩いている日向が目に入った。
「松宮くん」
「ん?」
日向が振り返る。
「藤森先輩」
「ちょっといい?」
「もちろん」
凛花は日向を廊下の端へ呼ぶ。
「綾花のことで聞きたいことがある」
「はい」
凛花は少しだけ日向を見る。
「松宮くんって、綾花のどこが好きなの?」
日向は少しも迷わなかった。
「全部です」
「……全部?」
「はい」
凛花が少し驚く。
日向はそのまま続けた。
「最初に会ったときから、可愛いなって思いました」
「うん」
「でも、話してみたら、思ってたよりずっとしっかりしてて」
「……うん」
「誰にでも優しいし、話してると楽しいし」
日向は少しだけ笑う。
「笑ったとき、めちゃくちゃ可愛いし」
「あと、なんか……一緒にいると落ち着くんですよね」
「落ち着く?」
「はい」
日向は少し照れたように笑った。
「俺、普段こんなに一人の人のこと考えないんですけど」
「……」
「先輩のことは、ずっと考えちゃう」
凛花は黙って聞いている。
「朝会ったら嬉しいし」
「うん」
「話せたら嬉しいし」
「うん」
「他の男の人と話してたら、普通に嫌だし」
「……嫉妬するんだ?」
「しますよ」
日向は即答した。
「めちゃくちゃします」
凛花は少し笑った。
「チャラ男なのに?」
「チャラ男だからって、好きな人に嫉妬しないわけじゃないですよ」
「……それもそうか」
日向は少しだけ黙ってから、凛花を見る。
「だから、遊びとかじゃないです」
凛花はしばらく黙っていた。
そして、
「……でも、聞いていい?」
「はい?」
「この間、一緒に帰った時って何かあった?」
日向の顔が少し緩む。
「ああ……ありました」
「何?」
「俺から聞いたんです」
「何を?」
日向は昨日のことを思い出す。
「先輩に、俺のこと好き?って」
「……え」
凛花が目を丸くする。
「そしたら」
日向は笑いながら話す。
「先輩、何も考えずに『好きだよ』って言ったんですよ」
「……あや、言いそう」
「俺も一瞬、何が起きたか分かんなくて」
日向は少し笑う。
「『え!?』ってなりました」
「ふふっ」
「そしたら先輩が」
日向は少し悔しそうな顔をする。
「『後輩としてね』って」
凛花が吹き出した。
「やっぱり!!」
「笑わないでくださいよ」
「だって、あやすぎるんだもん笑」
「俺、普通に喜んだんですよ?」
「うんうん笑」
「めちゃくちゃ嬉しかったのに……」
日向はため息をつく。
「一瞬で落とされました」
凛花は笑いながらも、少しだけ日向を見る。
「でも、それでも好きなんだ?」
「はい」
今度も即答だった。
「むしろ、もっと好きになりました」
「……なんで?」
「いつか、その『後輩として』を変えたいから」
凛花は黙った。
日向はまっすぐ前を見ながら言う。
「俺、先輩にちゃんと男として見てもらいたいです」
凛花はしばらく日向を見つめる。
そして、小さく息を吐いた。
「……分かった」
「信じてくれます?」
「少しだけね」
「少しだけ?」
「まだ松宮くんのこと、よく知らないから」
「じゃあ、これから知ってください」
「……ふふ」
凛花が笑う。
「そういうところは、やっぱりチャラいね」
「え、今の結構真面目だったんですけど」
「分かってるよ」
凛花は少しだけ笑って、
「でも、思ってたよりちゃんとしてた」
「ありがとうございます」
「ただし」
凛花の表情が真剣になる。
「綾花を泣かせたら、絶対許さないから」
「分かってます」
日向は迷わず答えた。
「俺が泣かせたくないですから」
そのとき。
「りーん!」
廊下の向こうから綾花の声が聞こえた。
「あや!」
綾花が二人のところまで駆けてくる。
「何話してたの?」
凛花と日向が顔を見合わせる。
「秘密」
「えー!」
綾花が不満そうな顔をする。
「松宮くんも?」
「はい、秘密です」
「もう、二人して何なの笑」
綾花が笑う。
その笑顔を見ながら、凛花は思った。
――この子を好きになるのも、ちょっと分かるかも。
そして日向は。
――やっぱり、この笑顔が好きだ。
そう思いながら、綾花の隣を歩いた。



