今日は合同体育だった。
体育館には、男子と女子それぞれのコートが作られている。
「今日は男女別でバスケなー」
先生の声が響く。
「綾花、頑張ってね」
「うん、りんもね!」
綾花と凛花は女子側のコートへ向かっていく。
「綾花先輩、バスケ部だから本気出しそう」
圭が笑う。
「だろうな」
日向も笑いながら、女子側を見る。
綾花がボールを持っている。
普段より少しだけ真剣な顔。
「……かっこいいな」
「何?」
「いや、なんでもない」
女子の試合が始まる。
綾花がボールを受け取り、ドリブルで相手を抜いていく。
そのままシュート。
「入った!」
女子側から歓声が上がる。
日向は思わず笑った。
「やっぱ先輩、上手いな」
「そりゃバスケ部だし」
圭が当たり前のように答える。
そのとき。
「なあ」
後ろから、男子の声が聞こえた。
「齋藤って、やっぱ可愛くね?」
日向が振り返る。
そこにいたのは、綾花と同じクラスの男子たちだった。
「分かる」
「普通に可愛いよな」
「しかも性格いいし」
「彼氏いないんだろ?」
「いないらしい」
「え、じゃあ俺いこうかな」
「お前、齋藤のこと好きだったの?」
「いや、前からちょっと気になってた」
「じゃあ俺も狙おうかな」
男子たちは楽しそうに笑っている。
日向は何も言わず、女子コートへ視線を戻した。
綾花がまたシュートを決める。
「ナイス、齋藤!」
男子の一人が女子側へ声をかける。
綾花はそれに気づいて、笑いながら手を振った。
「ありがとー!」
「……」
日向の眉が、ほんの少し動く。
「……何あれ」
「ん?」
圭が日向を見る。
「先輩、あんな感じなん?」
「どういう意味?」
「普通に男子から声かけられてんじゃん」
「まあ、いつものことじゃない?」
「……いつものこと?」
圭は不思議そうに日向を見る。
「綾花先輩、結構モテるよ?」
「……」
日向は黙った。
知っているつもりだった。
可愛いことも。
優しいことも。
人気があることも。
でも。
実際に他の男子が綾花を見て、
「可愛い」
「狙いたい」
なんて言っているのを聞くと。
思っていたより、ずっと嫌だった。
「……やばいな」
「何が?」
「いや」
日向は女子コートを見つめたまま呟く。
「俺、普通に焦ってる」
「今さら?」
「今さら」
圭が笑う。
「お前、一目惚れしてからずっと先輩しか見てないじゃん」
「そうだけど」
「じゃあ頑張れよ」
「……うん」
そのとき。
女子の試合が終わった。
綾花が友達と話しながら、こちらへ歩いてくる。
「圭ー!」
「お疲れ様です、綾花先輩」
「疲れた〜!」
「さすがバスケ部」
「でしょ?」
綾花が笑う。
そして、日向を見る。
「あ、松宮くん」
「お疲れ様です、先輩」
「見てた?」
「はい」
「どうだった?」
「めちゃくちゃ上手かったです」
「ほんと?」
「はい。かっこよかった」
「ありがとう笑」
綾花は嬉しそうに笑う。
日向も笑った。
でも。
さっきまで聞こえていた男子たちの声が、まだ頭から離れない。
――齋藤って、やっぱ可愛くね?
――俺、狙おうかな。
日向は綾花を見る。
「……先輩」
「ん?」
「今日、モテモテでしたね」
「え?」
綾花がきょとんとする。
「何が?」
「……いや、なんでもないです」
「変なの笑」
綾花はそう言って笑った。
その笑顔を見て。
日向は心の中で、小さくため息をつく。
――この人。
自分がどれだけモテてるか、本当に分かってないんだ。
そして。
――早く、俺のことだけ見てくれないかな。
そんなことを思いながら、日向は綾花の隣を歩いた。
体育館には、男子と女子それぞれのコートが作られている。
「今日は男女別でバスケなー」
先生の声が響く。
「綾花、頑張ってね」
「うん、りんもね!」
綾花と凛花は女子側のコートへ向かっていく。
「綾花先輩、バスケ部だから本気出しそう」
圭が笑う。
「だろうな」
日向も笑いながら、女子側を見る。
綾花がボールを持っている。
普段より少しだけ真剣な顔。
「……かっこいいな」
「何?」
「いや、なんでもない」
女子の試合が始まる。
綾花がボールを受け取り、ドリブルで相手を抜いていく。
そのままシュート。
「入った!」
女子側から歓声が上がる。
日向は思わず笑った。
「やっぱ先輩、上手いな」
「そりゃバスケ部だし」
圭が当たり前のように答える。
そのとき。
「なあ」
後ろから、男子の声が聞こえた。
「齋藤って、やっぱ可愛くね?」
日向が振り返る。
そこにいたのは、綾花と同じクラスの男子たちだった。
「分かる」
「普通に可愛いよな」
「しかも性格いいし」
「彼氏いないんだろ?」
「いないらしい」
「え、じゃあ俺いこうかな」
「お前、齋藤のこと好きだったの?」
「いや、前からちょっと気になってた」
「じゃあ俺も狙おうかな」
男子たちは楽しそうに笑っている。
日向は何も言わず、女子コートへ視線を戻した。
綾花がまたシュートを決める。
「ナイス、齋藤!」
男子の一人が女子側へ声をかける。
綾花はそれに気づいて、笑いながら手を振った。
「ありがとー!」
「……」
日向の眉が、ほんの少し動く。
「……何あれ」
「ん?」
圭が日向を見る。
「先輩、あんな感じなん?」
「どういう意味?」
「普通に男子から声かけられてんじゃん」
「まあ、いつものことじゃない?」
「……いつものこと?」
圭は不思議そうに日向を見る。
「綾花先輩、結構モテるよ?」
「……」
日向は黙った。
知っているつもりだった。
可愛いことも。
優しいことも。
人気があることも。
でも。
実際に他の男子が綾花を見て、
「可愛い」
「狙いたい」
なんて言っているのを聞くと。
思っていたより、ずっと嫌だった。
「……やばいな」
「何が?」
「いや」
日向は女子コートを見つめたまま呟く。
「俺、普通に焦ってる」
「今さら?」
「今さら」
圭が笑う。
「お前、一目惚れしてからずっと先輩しか見てないじゃん」
「そうだけど」
「じゃあ頑張れよ」
「……うん」
そのとき。
女子の試合が終わった。
綾花が友達と話しながら、こちらへ歩いてくる。
「圭ー!」
「お疲れ様です、綾花先輩」
「疲れた〜!」
「さすがバスケ部」
「でしょ?」
綾花が笑う。
そして、日向を見る。
「あ、松宮くん」
「お疲れ様です、先輩」
「見てた?」
「はい」
「どうだった?」
「めちゃくちゃ上手かったです」
「ほんと?」
「はい。かっこよかった」
「ありがとう笑」
綾花は嬉しそうに笑う。
日向も笑った。
でも。
さっきまで聞こえていた男子たちの声が、まだ頭から離れない。
――齋藤って、やっぱ可愛くね?
――俺、狙おうかな。
日向は綾花を見る。
「……先輩」
「ん?」
「今日、モテモテでしたね」
「え?」
綾花がきょとんとする。
「何が?」
「……いや、なんでもないです」
「変なの笑」
綾花はそう言って笑った。
その笑顔を見て。
日向は心の中で、小さくため息をつく。
――この人。
自分がどれだけモテてるか、本当に分かってないんだ。
そして。
――早く、俺のことだけ見てくれないかな。
そんなことを思いながら、日向は綾花の隣を歩いた。



