第六話 先輩、人気なんだ
六時間目。
今日は合同体育だった。
体育館には、男子と女子それぞれのコートが作られている。
「今日は男女別でバスケなー」
先生の声が響く。
「綾花、頑張ってね」
「うん、りんもね!」
綾花と凛花は女子側のコートへ向かっていく。
「綾花先輩、バスケ部だから本気出しそう」
圭が笑う。
「だろうな」
日向も笑いながら、女子側を見る。
綾花がボールを持っている。
普段より少しだけ真剣な顔。
「……かっこいいな」
「何?」
「いや、なんでもない」
女子の試合が始まる。
綾花がボールを受け取り、ドリブルで相手を抜いていく。
そのままシュート。
「入った!」
女子側から歓声が上がる。
日向は思わず笑った。
「やっぱ先輩、上手いな」
「そりゃバスケ部だし」
圭が当たり前のように答える。
そのとき。
「なあ」
後ろから、男子の声が聞こえた。
「齋藤って、やっぱ可愛くね?」
日向が振り返る。
そこにいたのは、綾花と同じクラスの男子たちだった。
「分かる」
「普通に可愛いよな」
「しかも性格いいし」
「彼氏いないんだろ?」
「いないらしい」
「え、じゃあ俺いこうかな」
「お前、齋藤のこと好きだったの?」
「いや、前からちょっと気になってた」
「じゃあ俺も狙おうかな」
男子たちは楽しそうに笑っている。
日向は何も言わず、女子コートへ視線を戻した。
綾花がまたシュートを決める。
「ナイス、齋藤!」
男子の一人が女子側へ声をかける。
綾花はそれに気づいて、笑いながら手を振った。
「ありがとー!」
「……」
日向の眉が、ほんの少し動く。
「……何あれ」
「ん?」
圭が日向を見る。
「先輩、あんな感じなん?」
「どういう意味?」
「普通に男子から声かけられてんじゃん」
「まあ、いつものことじゃない?」
「……いつものこと?」
圭は不思議そうに日向を見る。
「綾花先輩、結構モテるよ?」
「……」
日向は黙った。
知っているつもりだった。
可愛いことも。
優しいことも。
人気があることも。
でも。
実際に他の男子が綾花を見て、
「可愛い」
「狙いたい」
なんて言っているのを聞くと。
思っていたより、ずっと嫌だった。
「……やばいな」
「何が?」
「いや」
日向は女子コートを見つめたまま呟く。
「俺、普通に焦ってる」
「今さら?」
「今さら」
圭が笑う。
「お前、一目惚れしてからずっと先輩しか見てないじゃん」
「そうだけど」
「じゃあ頑張れよ」
「……うん」
そのとき。
女子の試合が終わった。
綾花が友達と話しながら、こちらへ歩いてくる。
「圭ー!」
「お疲れ様です、綾花先輩」
「疲れた〜!」
「さすがバスケ部」
「でしょ?」
綾花が笑う。
そして、日向を見る。
「あ、松宮くん」
「お疲れ様です、先輩」
「見てた?」
「はい」
「どうだった?」
「めちゃくちゃ上手かったです」
「ほんと?」
「はい。かっこよかった」
「ありがとう笑」
綾花は嬉しそうに笑う。
日向も笑った。
でも。
さっきまで聞こえていた男子たちの声が、まだ頭から離れない。
――齋藤って、やっぱ可愛くね?
――俺、狙おうかな。
日向は綾花を見る。
「……先輩」
「ん?」
「今日、モテモテでしたね」
「え?」
綾花がきょとんとする。
「何が?」
「……いや、なんでもないです」
「変なの笑」
綾花はそう言って笑った。
その笑顔を見て。
日向は心の中で、小さくため息をつく。
――この人。
自分がどれだけモテてるか、本当に分かってないんだ。
そして。
――早く、俺のことだけ見てくれないかな。
そんなことを思いながら、日向は綾花の隣を歩いた。
六時間目。
今日は合同体育だった。
体育館には、男子と女子それぞれのコートが作られている。
「今日は男女別でバスケなー」
先生の声が響く。
「綾花、頑張ってね」
「うん、りんもね!」
綾花と凛花は女子側のコートへ向かっていく。
「綾花先輩、バスケ部だから本気出しそう」
圭が笑う。
「だろうな」
日向も笑いながら、女子側を見る。
綾花がボールを持っている。
普段より少しだけ真剣な顔。
「……かっこいいな」
「何?」
「いや、なんでもない」
女子の試合が始まる。
綾花がボールを受け取り、ドリブルで相手を抜いていく。
そのままシュート。
「入った!」
女子側から歓声が上がる。
日向は思わず笑った。
「やっぱ先輩、上手いな」
「そりゃバスケ部だし」
圭が当たり前のように答える。
そのとき。
「なあ」
後ろから、男子の声が聞こえた。
「齋藤って、やっぱ可愛くね?」
日向が振り返る。
そこにいたのは、綾花と同じクラスの男子たちだった。
「分かる」
「普通に可愛いよな」
「しかも性格いいし」
「彼氏いないんだろ?」
「いないらしい」
「え、じゃあ俺いこうかな」
「お前、齋藤のこと好きだったの?」
「いや、前からちょっと気になってた」
「じゃあ俺も狙おうかな」
男子たちは楽しそうに笑っている。
日向は何も言わず、女子コートへ視線を戻した。
綾花がまたシュートを決める。
「ナイス、齋藤!」
男子の一人が女子側へ声をかける。
綾花はそれに気づいて、笑いながら手を振った。
「ありがとー!」
「……」
日向の眉が、ほんの少し動く。
「……何あれ」
「ん?」
圭が日向を見る。
「先輩、あんな感じなん?」
「どういう意味?」
「普通に男子から声かけられてんじゃん」
「まあ、いつものことじゃない?」
「……いつものこと?」
圭は不思議そうに日向を見る。
「綾花先輩、結構モテるよ?」
「……」
日向は黙った。
知っているつもりだった。
可愛いことも。
優しいことも。
人気があることも。
でも。
実際に他の男子が綾花を見て、
「可愛い」
「狙いたい」
なんて言っているのを聞くと。
思っていたより、ずっと嫌だった。
「……やばいな」
「何が?」
「いや」
日向は女子コートを見つめたまま呟く。
「俺、普通に焦ってる」
「今さら?」
「今さら」
圭が笑う。
「お前、一目惚れしてからずっと先輩しか見てないじゃん」
「そうだけど」
「じゃあ頑張れよ」
「……うん」
そのとき。
女子の試合が終わった。
綾花が友達と話しながら、こちらへ歩いてくる。
「圭ー!」
「お疲れ様です、綾花先輩」
「疲れた〜!」
「さすがバスケ部」
「でしょ?」
綾花が笑う。
そして、日向を見る。
「あ、松宮くん」
「お疲れ様です、先輩」
「見てた?」
「はい」
「どうだった?」
「めちゃくちゃ上手かったです」
「ほんと?」
「はい。かっこよかった」
「ありがとう笑」
綾花は嬉しそうに笑う。
日向も笑った。
でも。
さっきまで聞こえていた男子たちの声が、まだ頭から離れない。
――齋藤って、やっぱ可愛くね?
――俺、狙おうかな。
日向は綾花を見る。
「……先輩」
「ん?」
「今日、モテモテでしたね」
「え?」
綾花がきょとんとする。
「何が?」
「……いや、なんでもないです」
「変なの笑」
綾花はそう言って笑った。
その笑顔を見て。
日向は心の中で、小さくため息をつく。
――この人。
自分がどれだけモテてるか、本当に分かってないんだ。
そして。
――早く、俺のことだけ見てくれないかな。
そんなことを思いながら、日向は綾花の隣を歩いた。



