きみがすきなもの、ぼくがすきなもの。


ふたりが恋人同士になってから初めて迎える、春。
あれから、月に一度のローカル線の旅は終わっていないけれど、その意味は少しだけ変わった。
「ねえ、見て! 今度のフリーマーケットで、このヴィンテージの水筒を見つけたんだ!」
「うわ、本当だ、めっちゃかっこいいじゃん……。あ、そうだ加奈ちゃん、今度は僕、新しいパウンドケーキのレシピを考えてきたんだよ。今度のアパートで一緒に焼こう?」
駅前のベンチ。
加奈のリュックには、あのとき貫太にもらったバイクのキーホルダーが揺れ、貫太のバッグには、加奈がプレゼントした無骨なレザーのチャームがついている。
世間の「普通」という物差しから見れば、少しだけあべこべかもしれない。
女の子なのに男っぽいものが好きで、男の子なのに女っぽいものが好き。
そんな自分たちの凸凹な部分を、お互いに隠す必要なんて、もうどこにもない。
「ねえ、貫太くん」
「ん?」
「これからも、ふたりの『好き』を、ずっと一緒に分け合おうね」
「うん。当たり前だよ、加奈ちゃん」
きみがすきなものを、ぼくも大切にしたい。
ぼくがすきなものを、きみと一緒に笑いたい。
正反対で、よく似たふたりの歩幅は、これからの未来へ向けて、しっかりと重なり合っていった。