朝から雨が降っていた。
窓を叩く雨音は、静かで一定のリズムを刻んでいる。
新しいノートを開いた昨日のことを思い出す。
最初のページに並んだふたりの言葉。
その温度が胸の奥にまだ残っていた。
「……レシピ、書こうかな」
ふと思った。
交換日記のように使ってきたけれど、
本来は“レシピノート”だった。
新しい一冊の最初のレシピは、
少し特別なものにしたかった。
◇
夕方。
カフェ・ルーチェの扉を開けると、
雨の匂いとコーヒーの香りが混ざり合っていた。
「いらっしゃい」
悠真さんが、雨の日特有の柔らかい笑顔で迎えてくれた。
「雨宮さん、ノート持ってます?」
「はい」
「よかった。今日、書きたいことがあって」
胸が跳ねる。
「……私もです」
「じゃあ、後で一緒に書きましょう」
その言葉だけで、胸がじんわり温かくなる。
◇
閉店後。
軽ワゴンの中で、ふたり並んで座る。
雨音が静かに響いていた。
「雨宮さん、先に書きます?」
「……はい」
私は新しいノートを開き、
ゆっくりペンを走らせた。
◆レシピノート(新しい一冊・2ページ目)
雨宮陽菜のレシピ
『雨の日の簡単スープ
・玉ねぎ 1/2
・じゃがいも 1個
・コンソメ 少し
・牛乳 少し
・塩
・バター
弱火でゆっくり煮ると、雨の日みたいに静かな味になります。
桐生さんが疲れている日に作ってあげたいです。』
書き終えると、胸が少し熱くなった。
“作ってあげたい”なんて、
以前の自分なら書けなかった言葉だった。
悠真さんは静かにページを見つめ、
それからゆっくり笑った。
「……嬉しいです」
「え……」
「雨宮さんのスープ、絶対美味しいです」
胸が跳ねる。
「じゃあ……僕も書きますね」
悠真さんはペンを取り、
ゆっくり言葉を綴った。
桐生悠真のレシピ
『雨の日のカフェオレ
・深煎りの豆を少し多めに
・ミルクは温めすぎない
・砂糖は入れない
雨宮さんが好きな味に近づけたくて、最近少しずつ調整しています。
今度、雨宮さんのスープと一緒に飲みたいです。』
ページにふたりのレシピが並んだ瞬間、
新しいノートが本来の形を取り戻した気がした。
「雨宮さん」
「はい」
「今度……本当に一緒に作りませんか?」
胸がぎゅっとなる。
「……はい」
「雨の日でも晴れの日でも、どっちでもいいので」
「……雨の日がいいです」
悠真さんは静かに笑った。
「じゃあ、雨の日にしましょう」
◇
隣同士の部屋の前で立ち止まる。
「じゃあ……また明日」
「……はい」
昨日より少しだけ甘い「また明日」。
その言葉が、雨の夜を優しく照らしていた。
窓を叩く雨音は、静かで一定のリズムを刻んでいる。
新しいノートを開いた昨日のことを思い出す。
最初のページに並んだふたりの言葉。
その温度が胸の奥にまだ残っていた。
「……レシピ、書こうかな」
ふと思った。
交換日記のように使ってきたけれど、
本来は“レシピノート”だった。
新しい一冊の最初のレシピは、
少し特別なものにしたかった。
◇
夕方。
カフェ・ルーチェの扉を開けると、
雨の匂いとコーヒーの香りが混ざり合っていた。
「いらっしゃい」
悠真さんが、雨の日特有の柔らかい笑顔で迎えてくれた。
「雨宮さん、ノート持ってます?」
「はい」
「よかった。今日、書きたいことがあって」
胸が跳ねる。
「……私もです」
「じゃあ、後で一緒に書きましょう」
その言葉だけで、胸がじんわり温かくなる。
◇
閉店後。
軽ワゴンの中で、ふたり並んで座る。
雨音が静かに響いていた。
「雨宮さん、先に書きます?」
「……はい」
私は新しいノートを開き、
ゆっくりペンを走らせた。
◆レシピノート(新しい一冊・2ページ目)
雨宮陽菜のレシピ
『雨の日の簡単スープ
・玉ねぎ 1/2
・じゃがいも 1個
・コンソメ 少し
・牛乳 少し
・塩
・バター
弱火でゆっくり煮ると、雨の日みたいに静かな味になります。
桐生さんが疲れている日に作ってあげたいです。』
書き終えると、胸が少し熱くなった。
“作ってあげたい”なんて、
以前の自分なら書けなかった言葉だった。
悠真さんは静かにページを見つめ、
それからゆっくり笑った。
「……嬉しいです」
「え……」
「雨宮さんのスープ、絶対美味しいです」
胸が跳ねる。
「じゃあ……僕も書きますね」
悠真さんはペンを取り、
ゆっくり言葉を綴った。
桐生悠真のレシピ
『雨の日のカフェオレ
・深煎りの豆を少し多めに
・ミルクは温めすぎない
・砂糖は入れない
雨宮さんが好きな味に近づけたくて、最近少しずつ調整しています。
今度、雨宮さんのスープと一緒に飲みたいです。』
ページにふたりのレシピが並んだ瞬間、
新しいノートが本来の形を取り戻した気がした。
「雨宮さん」
「はい」
「今度……本当に一緒に作りませんか?」
胸がぎゅっとなる。
「……はい」
「雨の日でも晴れの日でも、どっちでもいいので」
「……雨の日がいいです」
悠真さんは静かに笑った。
「じゃあ、雨の日にしましょう」
◇
隣同士の部屋の前で立ち止まる。
「じゃあ……また明日」
「……はい」
昨日より少しだけ甘い「また明日」。
その言葉が、雨の夜を優しく照らしていた。



