朝から雨が降っていた。
窓を叩く雨音は強くも弱くもなく、
ただ静かに、一定のリズムで世界を濡らしていた。
「……今日で、このノートも最後のページか」
レシピノートを開くと、
残りはあと一枚だけだった。
ふたりで書き続けてきた交換日記。
雨の日も、晴れの日も、
不安な日も、嬉しい日も、
全部このノートに積み重なっている。
胸の奥が静かに温かくなる。
◇
夕方。
カフェ・ルーチェの扉を開けると、
雨の匂いとコーヒーの香りが混ざり合って、
どこか懐かしい空気が広がっていた。
「いらっしゃい」
悠真さんが、雨の日特有の柔らかい笑顔で迎えてくれた。
「雨宮さん、今日……ノート持ってます?」
「はい」
「最後のページ、書きましょうか」
胸が跳ねた。
「……はい」
◇
窓際の席に座ると、
雨粒がガラスを伝ってゆっくり流れていく。
「雨宮さん」
「はい?」
「このノート、すごく大事なんです」
「……私もです」
「雨宮さんと過ごした時間が全部ここにあって……
読み返すと、どの日も大切で……」
言葉がゆっくり紡がれていく。
「最後のページは、ふたりで書きたいです」
胸がぎゅっとなる。
「……はい」
◇
閉店後。
雨は少し弱くなっていた。
軽ワゴンの中で、ふたり並んで座る。
雨音が静かに響いていた。
「じゃあ……書きましょうか」
悠真さんがノートを開く。
最後のページが、静かにふたりを待っていた。
「先に書いてもいいですか?」
「……はい」
悠真さんはペンを取り、
ゆっくりと言葉を綴った。
◆レシピノート(交換日記)
最後のページ
桐生悠真
『雨の日も、晴れの日も、
不安な日も、嬉しい日も、
全部、雨宮さんと一緒に過ごせてよかったです。
このノートが終わっても、
ふたりの時間は続いていきます。
ゆっくりでいいので、
これからも隣にいてください。』
悠真さんはペンを置き、
静かにノートを私へ差し出した。
「雨宮さんの言葉も、ここに」
胸が熱くなる。
私はペンを持ち、
ゆっくりと言葉を綴った。
雨宮陽菜*
『このノートに書いた日々は、
全部、桐生さんと過ごした大切な時間です。
不安な日もあったけれど、
桐生さんの言葉で、少しずつ前に進めました。
このノートが終わっても、
ふたりの時間が続いていくことが嬉しいです。
ゆっくり、隣を歩きたいです。』
最後のページが埋まった。
ふたりの言葉が並んで、
静かに一冊が終わった。
◇
隣同士の部屋の前で立ち止まる。
「雨宮さん」
「はい?」
「このノート……次の一冊も、一緒に書きませんか?」
胸が跳ねる。
「……はい」
「ゆっくりでいいので」
「ゆっくり書きます」
悠真さんは静かに笑った。
「じゃあ……また明日」
「……はい」
雨の夜は、今日も静かに恋を進めてくれた。
窓を叩く雨音は強くも弱くもなく、
ただ静かに、一定のリズムで世界を濡らしていた。
「……今日で、このノートも最後のページか」
レシピノートを開くと、
残りはあと一枚だけだった。
ふたりで書き続けてきた交換日記。
雨の日も、晴れの日も、
不安な日も、嬉しい日も、
全部このノートに積み重なっている。
胸の奥が静かに温かくなる。
◇
夕方。
カフェ・ルーチェの扉を開けると、
雨の匂いとコーヒーの香りが混ざり合って、
どこか懐かしい空気が広がっていた。
「いらっしゃい」
悠真さんが、雨の日特有の柔らかい笑顔で迎えてくれた。
「雨宮さん、今日……ノート持ってます?」
「はい」
「最後のページ、書きましょうか」
胸が跳ねた。
「……はい」
◇
窓際の席に座ると、
雨粒がガラスを伝ってゆっくり流れていく。
「雨宮さん」
「はい?」
「このノート、すごく大事なんです」
「……私もです」
「雨宮さんと過ごした時間が全部ここにあって……
読み返すと、どの日も大切で……」
言葉がゆっくり紡がれていく。
「最後のページは、ふたりで書きたいです」
胸がぎゅっとなる。
「……はい」
◇
閉店後。
雨は少し弱くなっていた。
軽ワゴンの中で、ふたり並んで座る。
雨音が静かに響いていた。
「じゃあ……書きましょうか」
悠真さんがノートを開く。
最後のページが、静かにふたりを待っていた。
「先に書いてもいいですか?」
「……はい」
悠真さんはペンを取り、
ゆっくりと言葉を綴った。
◆レシピノート(交換日記)
最後のページ
桐生悠真
『雨の日も、晴れの日も、
不安な日も、嬉しい日も、
全部、雨宮さんと一緒に過ごせてよかったです。
このノートが終わっても、
ふたりの時間は続いていきます。
ゆっくりでいいので、
これからも隣にいてください。』
悠真さんはペンを置き、
静かにノートを私へ差し出した。
「雨宮さんの言葉も、ここに」
胸が熱くなる。
私はペンを持ち、
ゆっくりと言葉を綴った。
雨宮陽菜*
『このノートに書いた日々は、
全部、桐生さんと過ごした大切な時間です。
不安な日もあったけれど、
桐生さんの言葉で、少しずつ前に進めました。
このノートが終わっても、
ふたりの時間が続いていくことが嬉しいです。
ゆっくり、隣を歩きたいです。』
最後のページが埋まった。
ふたりの言葉が並んで、
静かに一冊が終わった。
◇
隣同士の部屋の前で立ち止まる。
「雨宮さん」
「はい?」
「このノート……次の一冊も、一緒に書きませんか?」
胸が跳ねる。
「……はい」
「ゆっくりでいいので」
「ゆっくり書きます」
悠真さんは静かに笑った。
「じゃあ……また明日」
「……はい」
雨の夜は、今日も静かに恋を進めてくれた。



