朝から空は薄い雲に覆われていた。
雨は降りそうで降らない。
そんな曖昧な天気が、今日の胸の奥の気持ちみたいだった。
昨日の帰り道のことを思い出す。
手をつないだ温かさ。
曇り空の下で交わした「また明日」。
胸の奥が静かに満たされる。
「……今日も会えるかな」
小さく呟く。
恋人になってから、こうして“会いたい”と思う時間が増えた。
◇
夕方。
カフェ・ルーチェの扉を開けると、コーヒーの香りがふわりと広がった。
「いらっしゃい」
悠真さんが、昨日より少し柔らかい笑顔で迎えてくれた。
「今日も来てくれて嬉しいです」
「……来たくなったので」
言葉にすると照れくさい。
でも、もう隠す必要はない気がした。
「座っててください。少し話したいことがあって」
「話したいこと……?」
胸が少しだけ跳ねる。
◇
窓際の席に座ると、ラテが運ばれてきた。
泡の上には、昨日より少し丁寧なハートが描かれていた。
「雨宮さん」
「はい?」
「最近、毎日来てくれてますよね」
「……はい」
「嬉しいです」
その言葉だけで胸が温かくなる。
「僕、雨宮さんと過ごす時間がすごく好きで……」
「……私もです」
言葉にすると、胸がまた静かに熱くなる。
悠真さんは少しだけ視線を落とした。
それから、ゆっくりと口を開く。
「いつか……なんですけど」
胸が跳ねる。
「雨宮さんと、もっと一緒にいられたらいいなって思うことがあります」
「……もっと?」
「はい。帰り道だけじゃなくて、朝とか、休日とか……」
言葉がゆっくり、慎重に紡がれていく。
「いつか……一緒に住めたらいいなって」
心臓が止まりそうになる。
「……え……」
「もちろん、すぐじゃなくていいです。
雨宮さんのペースでいいです。
でも、そんな未来を想像してしまうくらい……」
少し照れたように笑う。
「雨宮さんのことが好きなんです」
胸がぎゅっとなる。
昨日までの甘さとは違う、少しだけ深い温度。
「……桐生さん」
声が震える。
「私……そんなふうに思ってもらえるなんて……」
言葉がうまく出てこない。
でも、胸の奥は静かに満たされていく。
「嬉しいです……すごく」
悠真さんは安心したように笑った。
「ゆっくりでいいですよ。
急がなくていいです。
ただ……いつか、そんな未来があったらいいなって」
「……はい」
その言葉は、曖昧な天気の中でもはっきり聞こえた。
◇
閉店後。
外は雨が降りそうで降らない曇り空だった。
「今日は……歩いて帰りましょうか」
「はい」
二人で並んで歩く。
昨日より近い距離。
手をつなぐと、胸の奥が静かに熱くなる。
「雨宮さん」
「はい?」
「未来の話、急にしてごめんなさい」
「いえ……嬉しかったです」
「よかった」
曇り空の下で交わす言葉は、昨日より少しだけ深かった。
◇
隣同士の部屋の前で立ち止まる。
「じゃあ……また明日」
「……はい」
昨日より少しだけ長い沈黙。
でもその沈黙が心地よかった。
「おやすみなさい、雨宮さん」
「……おやすみなさい」
◇
部屋に戻ると、レシピノートを開いた。
今日は、悠真さんの書き込みが先にあった。
◆レシピノート(交換日記)
桐生悠真
『急がなくていいです。
雨宮さんのペースで進めたいです。
いつか一緒に住めたらいいなと思っています。
その未来を想像できるくらい、雨宮さんが大切です。』
雨宮陽菜
『未来の話をしてくれて嬉しかったです。
まだ少し怖いけれど、
桐生さんとなら、ゆっくり進んでいけそうです。』
ページがまた一つ増える。
二人の時間が、また一つ増える。
曇り空の帰り道は、今日も静かに恋を進めてくれた。
雨は降りそうで降らない。
そんな曖昧な天気が、今日の胸の奥の気持ちみたいだった。
昨日の帰り道のことを思い出す。
手をつないだ温かさ。
曇り空の下で交わした「また明日」。
胸の奥が静かに満たされる。
「……今日も会えるかな」
小さく呟く。
恋人になってから、こうして“会いたい”と思う時間が増えた。
◇
夕方。
カフェ・ルーチェの扉を開けると、コーヒーの香りがふわりと広がった。
「いらっしゃい」
悠真さんが、昨日より少し柔らかい笑顔で迎えてくれた。
「今日も来てくれて嬉しいです」
「……来たくなったので」
言葉にすると照れくさい。
でも、もう隠す必要はない気がした。
「座っててください。少し話したいことがあって」
「話したいこと……?」
胸が少しだけ跳ねる。
◇
窓際の席に座ると、ラテが運ばれてきた。
泡の上には、昨日より少し丁寧なハートが描かれていた。
「雨宮さん」
「はい?」
「最近、毎日来てくれてますよね」
「……はい」
「嬉しいです」
その言葉だけで胸が温かくなる。
「僕、雨宮さんと過ごす時間がすごく好きで……」
「……私もです」
言葉にすると、胸がまた静かに熱くなる。
悠真さんは少しだけ視線を落とした。
それから、ゆっくりと口を開く。
「いつか……なんですけど」
胸が跳ねる。
「雨宮さんと、もっと一緒にいられたらいいなって思うことがあります」
「……もっと?」
「はい。帰り道だけじゃなくて、朝とか、休日とか……」
言葉がゆっくり、慎重に紡がれていく。
「いつか……一緒に住めたらいいなって」
心臓が止まりそうになる。
「……え……」
「もちろん、すぐじゃなくていいです。
雨宮さんのペースでいいです。
でも、そんな未来を想像してしまうくらい……」
少し照れたように笑う。
「雨宮さんのことが好きなんです」
胸がぎゅっとなる。
昨日までの甘さとは違う、少しだけ深い温度。
「……桐生さん」
声が震える。
「私……そんなふうに思ってもらえるなんて……」
言葉がうまく出てこない。
でも、胸の奥は静かに満たされていく。
「嬉しいです……すごく」
悠真さんは安心したように笑った。
「ゆっくりでいいですよ。
急がなくていいです。
ただ……いつか、そんな未来があったらいいなって」
「……はい」
その言葉は、曖昧な天気の中でもはっきり聞こえた。
◇
閉店後。
外は雨が降りそうで降らない曇り空だった。
「今日は……歩いて帰りましょうか」
「はい」
二人で並んで歩く。
昨日より近い距離。
手をつなぐと、胸の奥が静かに熱くなる。
「雨宮さん」
「はい?」
「未来の話、急にしてごめんなさい」
「いえ……嬉しかったです」
「よかった」
曇り空の下で交わす言葉は、昨日より少しだけ深かった。
◇
隣同士の部屋の前で立ち止まる。
「じゃあ……また明日」
「……はい」
昨日より少しだけ長い沈黙。
でもその沈黙が心地よかった。
「おやすみなさい、雨宮さん」
「……おやすみなさい」
◇
部屋に戻ると、レシピノートを開いた。
今日は、悠真さんの書き込みが先にあった。
◆レシピノート(交換日記)
桐生悠真
『急がなくていいです。
雨宮さんのペースで進めたいです。
いつか一緒に住めたらいいなと思っています。
その未来を想像できるくらい、雨宮さんが大切です。』
雨宮陽菜
『未来の話をしてくれて嬉しかったです。
まだ少し怖いけれど、
桐生さんとなら、ゆっくり進んでいけそうです。』
ページがまた一つ増える。
二人の時間が、また一つ増える。
曇り空の帰り道は、今日も静かに恋を進めてくれた。



