次に繋げるラスト・パス!

県大会の決勝戦。 アリーナの熱気は最高潮に達していた。



第1コートのネットを挟んで対峙するのは、破竹の勢いで勝ち上がってきた「東中学校」と、大会の絶対王者である強豪「愛原クラブ」だ。



「――ピーッ!!」



試合開始のホイッスルが鳴り響く。



第1セットから、愛原クラブの猛攻はすさまじかった。長身を活かした高速のスパイクが、次々と東中の陣営を襲う。



「くっ……重い……!」



「拾うぞ! 諦めるな!」



しかし、愛原クラブの選手たちは、ラリーの最中にふと気付いた。



――何度、強烈なスパイクを打ち込んでも、絶対にボールが床に落ちない。



「なんでだ……!? あんな小さいリベロが、なんで全部のコースを読んでるの……!?」



愛原クラブの後衛やセッターが動揺の色を隠せない。



コートの後方を完全に支配していたのは、紛れもなく125センチの星坂乙葉だった。



相手がどんなに鋭いフェイントを落としても、乙葉は予測不能なスピードで床を滑り、正確なアンダーハンドでボールを梨央奈の元へと返す。



「乙葉、ナイスレシーブ!」



「先輩、お願いします!」



乙葉が拾い上げたボールを、梨央奈が完璧なトスワークと強烈なスパイクで相手コートへと叩き込む。



東中は、絶対王者である愛原クラブを相手に、一歩も引かずに互角の戦いを繰り広げていた。



観客席からも「あの東中の小さいリベロ、一体何者だ……!?」「愛原クラブの攻撃を完全に封じ込めてるぞ!」と驚愕の声が上がっていた。



ネットを挟んだ反対側、愛原クラブのコート。



かつて乙葉を切り捨てたコーチは、ベンチから青ざめた顔でコートの光景を見つめていた。



(あいつが……あの星坂が、あんなレシーブを……? うちにいたときは、ただの足手まといの控えだったはずなのに……!)



自分が「小さいから」という理由で目を向けず、才能を潰しかけた少女が、今や全国をも狙う強豪チームの「絶対的な守護神」として、自分の目の前で完璧に機能している。



コーチの額から冷や汗が伝い落ちる。



「ふざけるな……! あんなチビに、うちが押されるわけがないんだ……!」



コーチの怒号が響く中、試合はついに第3セット、24対24のデュースという極限の局面へと突入していた。