次に繋げるラスト・パス!

それからの乙葉の進化は、誰の目にも明らかだった。



相手がどれだけ意図を隠したフェイントを落としても、コートの端のさらに外側にボールを弾き飛ばそうとも、乙葉は蜘蛛の糸のようにその落下地点に先回りし、正確無比なレシーブを上げ続けた。



「また乙葉が拾った……!」



「あの子が後ろにいると、ボールが絶対に床に落ちる気がしない……」



チームメイトたちの信頼は、いつしか確信へと変わっていた。



そして迎えた、春の公式戦を控えたミーティングの席。



監督がホワイトボードの前に立ち、厳かにスタメンのメンバーを発表し始めた。



「……リベロ、星坂乙葉」 その名前が読み上げられた瞬間、部室がざわめいた。



「1年がスタメン……!? それも、あの体の小さい星坂が……?」



「でも、今のうちのチームの守備の要は間違いなくあの子だもんね……」



周囲の驚きを他所に、乙葉自身が一番驚いていた。自分が公式戦の、それもスタメンのコートに立てる。



小学校時代の自分に教えてやりたいほどの、夢のような現実だった。



「乙葉、よかったね!」



梨央奈が自分のことのように嬉しそうに微笑みかけ、乙葉の背中をバシッと叩いた。



「はいっ! 先輩のトスを活かせるように、絶対後ろを守り抜きます!」



1年生にしてレギュラーの座を掴み取るという、とんでもない偉業を成し遂げた乙葉。しかし、彼女の心にあったのは慢心ではなく、ただ「あのコートで自分のすべてを証明したい」という静かな闘志だけだった。





迎えた大会初戦。



体育館の天井から降り注ぐ照明の下、緊張した面持ちで、しかし一歩も引かない足取りで、乙葉はリベロのビブスをまとってコートへと足を踏み入れた。



「東中、行くぞーーっ!!」



梨央奈の掛け声とともに、東中学校バレー部は、公式戦の舞台へと飛び出していく。



初戦から、乙葉のレシーブ力は爆発していた。



相手チームの強力なアタッカーが放つスマッシュを、乙葉はまるで吸い寄せるように次々と拾い上げ、東中の攻撃へと繋いでみせる。



「ナイスレシーブ、乙葉!」



「ありがとうございます!」



梨央奈の美しいトスが上がり、チームは次々と得点を重ねていく。



観客席からも「あの1年生のリベロ、体は小さいけど動きがやばくないか……!?」というどよめきが起こっていた。



圧倒的な守備力を手に入れた東中は、破竹の勢いで予選を勝ち上がり、ついに、誰もが目標としていた「県大会」の舞台へと駒を進めることになったのだった。


そして、どんどん勝ち進み、ついに県大会の決勝戦までたどり着いたのだ。