翌日の放課後、再び降り出した小雨の中、下駄箱の前でちはるが頭を抱えていた。
「うわっ、また傘忘れた……! どうしよう、今日限りの提出物あるのに……!」
「……ほら」
ぼやきたちハルの頭上に、スッと差し出された一本の傘。
振り返ると、そこにはいつものように不機嫌そうな顔をした旭が立っていた。
「旭……? って、自分の分は?」
「俺は濡れてもいい。お前が濡れたらまた風邪ひくだろ」
「え、でもそれじゃ旭が――」
「いいから持っとけ。行くぞ、歩」
旭は有無を言わせず傘をちはるに押し付けると、近くにいた歩の首根っこを掴んで強引に歩き出した。
「おい、また俺かよ! 俺にはみはると帰るっていう大事な使命が――」
「文句言うな」
無理やり引きずられていく歩を見送りながら、傘を持たされたちはるはポカンと瞬きをする。
「……旭って、時々すごく心配性なんだから。お母さんみたい」
完全に“お母さん枠”で処理されたその言葉を遠くで聞いた旭は、わずかに足元をよろめかせ、歩の肩に全体重を預けるのであった。
恋に不器用な兄姉たちの歯がゆい距離感は、今日も今日とて、末っ子たちの冷徹かつ温かい視線のなかで一歩も進まぬまま続いていく。
「うわっ、また傘忘れた……! どうしよう、今日限りの提出物あるのに……!」
「……ほら」
ぼやきたちハルの頭上に、スッと差し出された一本の傘。
振り返ると、そこにはいつものように不機嫌そうな顔をした旭が立っていた。
「旭……? って、自分の分は?」
「俺は濡れてもいい。お前が濡れたらまた風邪ひくだろ」
「え、でもそれじゃ旭が――」
「いいから持っとけ。行くぞ、歩」
旭は有無を言わせず傘をちはるに押し付けると、近くにいた歩の首根っこを掴んで強引に歩き出した。
「おい、また俺かよ! 俺にはみはると帰るっていう大事な使命が――」
「文句言うな」
無理やり引きずられていく歩を見送りながら、傘を持たされたちはるはポカンと瞬きをする。
「……旭って、時々すごく心配性なんだから。お母さんみたい」
完全に“お母さん枠”で処理されたその言葉を遠くで聞いた旭は、わずかに足元をよろめかせ、歩の肩に全体重を預けるのであった。
恋に不器用な兄姉たちの歯がゆい距離感は、今日も今日とて、末っ子たちの冷徹かつ温かい視線のなかで一歩も進まぬまま続いていく。



