無口な彼の、静かな執着が甘すぎる。




「……そばに、いてください。一人になる方が、怖いです……柳さんと一緒がいい……です」




私の言葉を聞いた瞬間、柳さんの体がぴくっと強張った。
少しの沈黙の後、ハァ……と深く、大きなため息が頭の上から聞こえてくる。




「……あー……、まじで。それが無自覚なの、終わってる」




乱暴に髪をかき混ぜる柳さんの腕に、さらにギュッと力を込められた。






──────…。












「動けるか」

「……はい」

「じゃ、行くぞ。……めんどいな、あんな消毒臭いところに毎日行くの」




文句を言いながらも、私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる柳さんの背中を見つめる。
そういえば……柳さんが看護師を目指したきっかけって、なんだろう。

めんどい、だるい、なんて愚痴ばかり言っている割には、一度だって出勤に穴を開けたことがない。


……すごいなぁ。


私なんて、たった一度のトラウマでもう逃げ出すことばかり考えちゃっているのに。



「あら、二人で仲良く出勤?いいわね〜」

「そういう冷やかしだるいんで、業務に関係ない話はやめてください。それよりも、大事な話があるんです」




私が患者さんからセクハラを受け続けていたこと。
元入院患者の人に、ストーカー紛いの行為をされて襲われそうになったこと。


そして――恐怖のあまり、もうこの仕事に立つのが怖くなってしまったこと。


声が震えて上手く話せない私に代わって、全部、全部、柳さんが迷いのない言葉で説明してくれた。




「そんなことが……。患者さんのこと、気づいてあげられなくて本当にごめんなさいね」

「……いえ、私もしっかりと相談していなかったので……っ」

「長島さん。そういうとこ」




私の言葉を遮るように、柳さんが低く呆れたような声を差し込む。




「すぐ謝るなって、昨日も言っただろ」